Month: June 2025

  • シーバー病

    シーバー病(Sever病)は、**踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)**とも呼ばれ、小児の踵(かかと)の成長痛として知られています。以下に概要をまとめます。 ■ シーバー病(Sever病)の概要 項目 内容 別名 踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう) 好発年齢 8〜13歳頃の活発な男児に多い(女子ではやや低年齢) 原因 成長期の踵骨骨端核への繰り返す牽引ストレスや圧迫力(特にアキレス腱の牽引) 誘因 サッカー、バスケットボール、陸上などジャンプや走る動作の多いスポーツ活動 主な症状 – 踵の痛み(特に運動後や朝の一歩目)- 踵を押すと痛がる(圧痛)- つま先立ちや走ると痛みが増す 診断方法 – 臨床所見が中心(圧痛+運動誘発)- レントゲンで骨端線の拡大や不整を確認(ただし所見がないことも) 治療 原則保存療法(成長により自然治癒)1. 安静/スポーツ制限2. アイシング(運動後)3. ヒールカップやインソールの使用4. アキレス腱やふくらはぎのストレッチ5. 鎮痛薬(必要時) 予後 成長とともに自然に軽快することが多い。通常は数週間〜数ヶ月で改善。 復帰の目安 痛みが完全に消え、つま先立ちや走行で痛みがないこと  

  • 鼠径部症候群

    鼠径部症候群(Groin Pain Syndrome / Groin Syndrome)の概要 ■ 定義 鼠径部症候群は、スポーツ選手(特にサッカーやラグビーなど)に多くみられる、慢性的な鼠径部痛を呈する疾患群の総称です。解剖学的に明確な障害部位が特定できない場合も多く、「スポーツヘルニア」「アスリートヘルニア」とも呼ばれることがあります。 ■ 原因 複合的な要因が関与します。主なものは以下の通り: 腹直筋腱・内転筋腱の付着部炎(enthesopathy) 恥骨結合の不安定性や炎症 骨盤内の筋膜性障害(薄筋・内転筋・腹直筋など) 股関節インピンジメント(FAI) 股関節唇損傷 スポーツヘルニア(鼠径管後壁の脆弱性) ■ 症状 鼠径部(内側太ももや下腹部)における運動時の疼痛 特にキック動作、方向転換、ダッシュ、腹筋運動などで悪化 安静時は無症状であることが多い 一部では反復する股関節前面の違和感も訴える ■ 診断 診断は主に**問診と身体所見、画像診断(除外診断を含む)**により行われます。 身体診察:内転筋抵抗テスト、腹筋抵抗テスト、片足立位・開排・閉脚運動での疼痛評価 画像検査: X線(恥骨結合や股関節変形評価) MRI(筋腱付着部炎、恥骨骨髄浮腫の有無 ■ 治療 基本は保存療法で、再発予防のためにも原因に応じたリハビリが重要です。 ● 保存療法(主流) 安静・運動制限 消炎鎮痛薬(NSAIDs) 物理療法(温熱、超音波) リハビリ(体幹・骨盤帯の安定性強化、柔軟性向上) テーピング・サポーターの使用 ■ 予後とスポーツ復帰 保存療法でも数週〜数ヶ月の加療で改善する例が多い 手術後も約8〜12週間でスポーツ復帰可能 再発防止にはコアマッスルの安定化トレーニングが重要 ■ スポーツ復帰のチェックポイント 完全な疼痛消失 腹筋・内転筋の筋力左右差解消 股関節の可動域が十分 ジャンプ・ダッシュ・方向転換時に痛みなし

  • 腰椎分離症 スポーツ障害

    小児の**腰椎分離症(ようついぶんりしょう)**について、以下に概要をまとめます。 ■ 腰椎分離症とは 腰椎の後方部分(椎弓)がストレスによって疲労骨折を起こし、分離状態となる病態です。小児期(特に成長期のスポーツ少年)に多くみられます。 ■ 好発年齢・性別 年齢:10〜15歳の成長期 性別:男子に多い スポーツ:野球、サッカー、バレーボール、体操など、腰を反らす・捻る動作が多い競技 ■ 主な症状 腰の鈍痛(特に運動後) 腰の反らし動作やジャンプ時の痛み 長時間の立位や歩行で悪化 神経症状は通常なし(ただし進行するとすべり症を合併し、坐骨神経痛を伴うことも) ■ 診断 1.  X線 側面像や斜位像でスコッチテリアサイン(犬の首が切れたような像) 初期では変化がない場合もある 2.  MRI 骨の炎症反応(初期のストレス反応)を検出可能 早期診断に有用 3.  CT 骨折線の評価に有用(特に偽関節化の有無) ■ 治療方針 ● 初期・骨癒合が期待できる時期 スポーツ休止(2〜3か月) 西良式コルセット装着 骨癒合を目指す保存療法が原則 痛みが軽減すれば、理学療法で体幹筋強化・柔軟性向上を行う ● 偽関節(骨癒合が得られない場合) 多くは保存加療でスポーツ復帰可能 持続する痛み・腰椎すべり症の進行例では手術を検討(稀) ■ 予後 早期診断・早期治療で骨癒合が可能 偽関節でも疼痛コントロールと運動指導によりスポーツ復帰可能 ■ ポイント 成長期に多い疲労骨折で、安静が最も大切 無理に運動を続けると骨癒合が得られなくなる 定期的な画像診断で治癒過程を確認しながら段階的復帰を行う  

  • 肉離れの運動復帰基準

    肉離れからの運動復帰の基準は、損傷の重症度によって異なりますが、以下のような臨床的評価項目をクリアすることが一般的な目安とされています。 ■ 運動復帰のための基本的な判断基準 項目 判定基準 ※疼痛の消失 必須 運動時・ストレッチ時に痛みがない(再発リスクが高いため痛みがある場合は不可)・圧痛がない ※可動域の回復 必須 損傷部位の関節の可動域が健側と同等 筋力の回復 筋力テストで健側の90%以上を確保(等尺性収縮時) ジャンプ・ランテスト 片脚ジャンプ・ダッシュ・カット動作で疼痛なく実施可能 再発予防トレーニング 筋力・柔軟性・バランスなどを含めた再発予防メニューを完了している ■ 重症度別の運動復帰までの目安(あくまで一般的) 重症度 競技復帰までの期間目安 軽度(Ⅰ度) 約1〜2週間 中等度(Ⅱ度) 約4〜12週間 重度(Ⅲ度) 12週以上(手術例ではさらに長期) ■ 医療的チェック(必要に応じて) 超音波またはMRIでの治癒確認 理学療法士やスポーツドクターによる最終評価 ■ 備考 焦って早期復帰すると再発率が高くなる(再発率は30〜40%とも) 特に過去に肉離れを起こした部位では慎重な復帰判断が必要  

  • オスグット病

    オスグッド病(正式名称:オスグッド・シュラッター病)は、成長期のスポーツをする子どもに多くみられる膝のスポーツ障害です。以下に概要をまとめます。 ■ オスグッド病の概要 項目 内容 別名 オスグッド・シュラッター病脛骨粗面骨軟骨炎 好発年齢 小学校高学年~中学生(10〜15歳)男子に多い 原因 成長期における太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)が、膝の下の骨(脛骨粗面)を繰り返し引っ張ることにより炎症が起きる 症状 – 膝下の隆起部(脛骨粗面)の痛み・腫れ- 押すと痛い(圧痛)- 走ったりジャンプ時に痛む- 膝を曲げづらいことも 診断 – 問診・身体診察(圧痛、隆起の確認)- レントゲン(脛骨粗面の骨の変化)で確認可能 治療 保存的治療が基本:- スポーツ休止や制限(特にジャンプ・ダッシュ)- アイシングや鎮痛剤(必要に応じて)- ストレッチ(大腿四頭筋の柔軟性改善)- サポーター・バンドの使用 予後 成長に伴い自然に治ることが多いが、膝下の隆起が残ることもある 予防 運動前後のストレッチ無理のない練習計画    

  • 肘内障について

    肘内障(ちゅうないしょう)は、**幼児に多い肘関節の亜脱臼(正確には橈骨頭の亜脱臼)**で、俗に「肘が抜けた」とも言われます。以下に概要をまとめます。 ■ 肘内障の概要 項目 内容 定義 橈骨頭が輪状靱帯から部分的に逸脱した状態(亜脱臼) 好発年齢 1〜5歳の幼児(特に2〜3歳) 原因 手を引っ張る・持ち上げるなどの外力(例:子どもと手をつないで歩いていて、転びそうになったときに引っ張る など) 症状 肘の痛み、動かさない(特に肘を曲げたがらない)、腕をだらんと下げたまま手掌を内側にして保持 診断 典型的なエピソードと症状から臨床診断(X線は通常不要。ただし骨折との鑑別が必要な場合には撮影) 治療 徒手整復(多くはすぐに整復され、直後に動かせるようになる)整復法:回外しながら屈曲、または回内しながら屈曲 予後 良好(整復後すぐに動かせるようになる)ただし再発しやすい(複数回繰り返すことも) 注意点 ・再発予防のため、引っ張らないように注意する・繰り返す場合や整復困難例では整形外科受診を勧める  

  • 足関節捻挫について

    以下に「足関節捻挫(そくかんせつねんざ)」の概要を簡潔にまとめます。 ■ 足関節捻挫(足首のねんざ) 【概要】 足関節捻挫は、足首をひねった際に靭帯が損傷するケガです。スポーツや段差での踏み外しなど、日常的によく起こります。 【原因】 着地時の足のねじれ 不安定な地面での歩行 スポーツ動作(ジャンプ・方向転換) 【好発部位】 **外側靭帯損傷(前距腓靭帯が最多)**が90%以上 内側靭帯(デルタ靭帯)損傷は比較的まれ 【症状】 足首の腫れ 痛み 皮下出血(内出血) 歩行時の違和感や不安定感 【重症度分類】 Ⅰ度:靭帯の微細損傷(軽度) Ⅱ度:靭帯の部分断裂(中等度) Ⅲ度:靭帯の完全断裂(重度) 【診断】 理学所見(前方引き出しテストなど) X線検査(骨折の除外) 超音波・MRI(重症例や再発例で使用) 【治療】 RICE処置(Rest・Ice・Compression・Elevation) 固定(テーピング・サポーター・ギプス) 早期のリハビリ(腫れ軽減後に可動域訓練・筋力強化) 重度例では手術適応となる場合もある 【予後】 軽症例では1〜2週間で改善 再発予防が重要(靭帯のゆるみが残ると慢性不安定性に)  

  • 肉離れについて

    肉離れ(筋挫傷)の概要 ■ 定義 肉離れとは、筋肉が強く引き伸ばされることによって、筋繊維の一部または全部が損傷・断裂する外傷性疾患です。**筋挫傷(muscle strain)**とも呼ばれます。 ■ 好発部位 主に下肢の筋肉に多くみられます: ハムストリングス(大腿後面) 大腿四頭筋(大腿前面) 腓腹筋(ふくらはぎ) ■ 原因・誘因 急なダッシュやジャンプ動作 急停止・方向転換 ウォームアップ不足 筋肉疲労や柔軟性低下 ■ 症状 筋肉部の急激な痛み 断裂部位の圧痛や腫れ 重症例では陥凹の触知や内出血(皮下出血斑) 歩行や運動時の困難 ■ 重症度分類(一般的な3段階) 重症度 内容 回復期間の目安 軽度(Ⅰ度) 筋繊維の微小損傷、痛み軽度 1〜2週間 中等度(Ⅱ度) 筋繊維の部分断裂、腫れや皮下出血あり 4〜12週間 重度(Ⅲ度) 完全断裂、陥凹・高度な痛み 12週間以上〜手術検討 ■ 診断 視診・触診(陥凹や圧痛の確認) エコーやMRIによる筋断裂の評価 ■ 治療 急性期(受傷直後〜48〜72時間) RICE処置(Rest, Ice, Compression, Elevation) 安静・冷却・圧迫・挙上 炎症が強い場合は消炎鎮痛剤の使用 回復期 軽いストレッチ → 筋力トレーニング スポーツ復帰は痛みがなく、筋力バランスが回復した後 重症例 筋腱の完全断裂では手術療法が選択される場合もある ■ 予防 十分なウォームアップとクールダウン 柔軟性トレーニング 適切な筋力トレーニング 再発予防としてのフォーム修正やバイオメカニクス評価  

  • 突き指について

    以下に「突き指(Jammed Finger / Sprained Finger)」の概要をまとめます。 ■ 突き指(捻挫・脱臼・骨折の可能性を含む外傷) ■ 定義 突き指とは、指先に外力が加わり、指関節(特にPIP関節=近位指節間関節)を過伸展または屈曲させる外傷の総称であり、単なる捻挫に限らず、靭帯損傷・腱損傷・脱臼・骨折を含む可能性がある。 ■ 原因 ボールや物体が指先に当たる(スポーツ中が多い) 手を突いた際の衝撃 指の誤った使い方による過伸展・過屈曲 ■ 損傷のタイプ 靱帯損傷(捻挫)  → PIP関節が最も多い。腫脹・圧痛・可動痛あり。 腱損傷  → 例:マレットフィンガー(DIP伸展不能)・ボタネール変形(PIP屈曲不能)など 脱臼  → PIPまたはDIP関節の関節脱臼。しばしば整復が必要。 骨折  → 基節骨・中節骨の裂離骨折や関節内骨折もあり ■ 検査 視診・触診・徒手検査 X線(必須):骨折・脱臼の有無確認 エコー:腱断裂の評価に有用 ■ 治療方針 ✅ 軽度捻挫 RICE処置(Rest, Ice, Compression, Elevation) テーピングまたは副子(1~2週) 可動域訓練は早期開始 ✅ 中~重度損傷(脱臼・骨折・腱断裂) 整復+固定(アルフェンスやスタッキースプリント) 必要に応じて整形外科的手術 マレットフィンガー:DIP伸展位固定6〜8週間 ■ 注意点 「突き指」として放置される中に骨折・腱断裂・脱臼が隠れていることが多い 正確な診断と早期治療が、変形拘縮や機能障害を防ぐカギ スポーツ復帰時期は腫脹・疼痛の軽減と可動域・握力の回復を目安に     「突き指」の中でも、手術適応となるケースは以下のような重症例や整復不能例、機能障害を伴う場合に限られます。 ■ 手術適応となる「突き指」例(代表的疾患ごと) ① マレットフィンガー(槌指) ● 病態 DIP関節の伸展不能(伸筋腱断裂または末節骨裂離骨折) ● 手術適応 裂離骨片が大きく関節面の1/3以上を占める場合 骨片が転位している(関節内不安定)場合 保存療法でDIP関節の伸展が不良な場合 ● 手術法の例 K-wire固定 小切開による骨片整復・固定 関節鏡視下手術も選択肢 ② PIP関節脱臼・骨折脱臼 ● 病態 中節骨または基節骨の裂離骨折、PIP関節の脱臼・不安定性 ● 手術適応 整復後も不安定(再脱臼) 骨片が関節内で嵌入している場合 関節面の大部分を占める骨折を伴う脱臼 高度変形または拘縮を伴う陳旧例 ● 手術法の例 関節内骨折の整復固定 靱帯再建または補強 小切開による関節整復 外固定や動的固定も併用されることあり ③ 腱損傷(屈筋腱・伸筋腱断裂) ● 病態 FDP腱(深指屈筋腱)断裂:DIP屈曲不能 中央索断裂や裂離:ボタネール変形、スワンネック変形 ● 手術適応 完全断裂 断端が遠位へ大きく偏位している 若年者・スポーツ選手で握力や指機能の保持が必要 ● 手術法の例 腱縫合術 腱移行・腱移植術(慢性期) ④ 関節内骨折(関節整復不良 or 骨片転位) […]

  • 野球肘について

    「野球肘」は、主に投球動作を繰り返すことで肘に負担がかかり発症する使いすぎ(オーバーユース)による障害です。特に成長期の野球少年に多く見られます。 ■ 分類 野球肘は、大きく以下の3つに分類されます: 種類 病態 主な原因・症状 内側型(牽引型) 上腕骨内側上顆の成長軟骨に牽引力がかかる 肘の内側の痛み、内側上顆の裂離損傷、小児では骨端線離開 外側型(圧迫型) 上腕骨小頭と橈骨頭の間の関節軟骨や骨に圧迫が加わる 肘の外側の痛み、離断性骨軟骨炎(OCD) 後方型(インピンジメント型) 肘の後方の骨同士がぶつかり合う 肘の後方の痛み、骨棘形成(ベネット病変など) ■ 好発年齢 小学生~中学生に多い(特にピッチャーやキャッチャー) ■ 主な症状 投球時や投球後の肘の痛み 肘の圧痛(特に内側や外側) 可動域制限(進行すると伸展制限など) 運動後の腫れや違和感 ■ 診断 問診(投球頻度・痛みの経過など) 触診・徒手検査(内側上顆圧痛、外側軟骨部圧痛など) X線(骨端線離開、骨棘、遊離体) MRI・CT(OCDの評価) 超音波検査(エコー)(成長線や骨軟骨損傷の早期発見) ■ 治療 軽度 安静(投球中止)、ストレッチ、物理療法、投球フォーム指導 中~重度 長期間の投球中止、ギプス固定、手術(遊離体摘出、骨軟骨修復)など ■ 予防 投球数の制限(学年ごとの基準あり) 投球フォームの改善 十分なウォーミングアップとクールダウン ポジションのローテーション(投手専任を避ける) 肘の違和感を軽視せず早期受診 ■ 備考 特に**離断性骨軟骨炎(OCD)**は早期発見・早期治療が非常に重要。進行すると関節ネズミ(遊離体)となり手術が必要。  

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