Year: 2025

  • 肩関節拘縮について

    肩関節拘縮(Frozen Shoulder / Adhesive Capsulitis) 概要 ■ 定義 肩関節拘縮とは、肩関節の関節包や靱帯が炎症や線維化によって硬化し、可動域が著しく制限される状態を指します。特に外転・外旋・屈曲の制限が目立ちます。 ■ 分類 原発性(特発性)拘縮  明らかな原因なく発症。40~60歳に好発。糖尿病や甲状腺疾患との関連が指摘されています。 続発性拘縮  外傷(骨折・脱臼)、術後(腱板修復術後など)、長期固定、疼痛性疾患(腱板断裂、石灰沈着性腱炎など)に続発。 ■ 症状 徐々に進行する肩の痛みと運動制限 夜間痛や安静時痛(初期に多い) 結髪・結帯・後方ポケット動作など日常動作の障害 ■ 病期 炎症期(Freezing phase):強い疼痛と可動域制限 拘縮期(Frozen phase):疼痛は軽減するが関節可動域の制限が顕著 回復期(Thawing phase):可動域の改善が進行(半年~1年以上かかることも) ■ 検査 X線:骨異常の除外 MRI:腱板断裂・滑液包炎・関節包肥厚などの評価 超音波:腱板の状態、滑液包、関節内液の評価 ■ 治療 ✅ 保存療法(第一選択) 内服(NSAIDs、アセトアミノフェンなど) 関節内注射(ステロイドやヒアルロン酸) リハビリテーション(関節可動域訓練、ストレッチ) ホットパックや超音波治療などの物理療法 ✅ 観血的治療(保存療法が無効な場合) 関節授動術(Manipulation under anesthesia) 関節鏡視下関節包解離術(Capsular release) ■ 予後 自然寛解もありうるが、早期の運動療法が予後改善の鍵 糖尿病合併例では長期化・再発傾向あり  

  • 肩関節周囲炎について

    **肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)**は、俗に「五十肩(ごじゅうかた)」とも呼ばれ、肩関節の痛みと可動域制限を主な症状とする疾患群です。以下に概要をまとめます。 ■ 概要 定義 肩関節周囲の軟部組織(腱、靭帯、関節包、滑液包など)に炎症や癒着が起こり、痛みと運動制限をきたす疾患。明らかな外傷や関節の構造的異常がない中年以降の方に多い。 ■ 原因・病態 明確な原因は不明(特発性)。 加齢に伴う腱板や関節包の変性が関与。 関節包の炎症 → 線維化 → 拘縮(関節の固まり)という経過をとる。 糖尿病や甲状腺疾患との関連もある。 ■ 症状 自発痛:特に夜間痛(寝返り時に強くなる)。 運動時痛:服の脱ぎ着、髪を結ぶ動作、背中に手を回すなどが困難。 可動域制限:外転・外旋・内旋の制限。 経過: 炎症期(数週間~数か月):強い痛み、特に夜間痛が主。 拘縮期(2〜6か月):痛みは軽減するが可動域制限が目立つ。 回復期(6か月~1年以上):徐々に可動域が回復。 ■ 診断 問診・理学所見:夜間痛と可動域制限の確認。 画像診断: X線:骨に異常なし。 MRI:腱板断裂との鑑別。関節包の肥厚や滑液包の炎症所見。 ■ 鑑別診断 腱板断裂 石灰沈着性腱炎 関節唇損傷(SLAP病変) 頸椎症による関連痛(神経根症) ■ 治療 保存療法(第一選択) 薬物療法:NSAIDs、湿布、夜間痛対策の鎮痛薬 注射:関節内ステロイド注射(炎症期に有効) 物理療法:温熱療法、超音波療法 リハビリ:ストレッチ、可動域訓練(拘縮期以降) 手術療法(まれ) 関節鏡下授動術(拘縮が強く、保存療法で改善しない場合) ■ 予後 多くは1~2年で自然軽快するが、リハビリを怠ると可動域制限が残ることもある。 再発は少ないが、反対側の肩にも起こることがある(約20~30%)。  

  • 変形性膝関節症について

    **変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう/英:Knee Osteoarthritis)**は、膝関節の軟骨がすり減り、関節の変形や炎症が生じる慢性的な疾患です。以下に概要を整理します。 ■ 疾患概要 定義:膝関節の関節軟骨が加齢や過負荷などで摩耗し、関節の変形や炎症、痛み、運動制限が生じる疾患。 好発年齢:中高年(特に50歳以上の女性に多い) 好発部位:膝関節(特に内側) ■ 原因 加齢(軟骨の加水分解・弾力性低下) 肥満(関節への負荷増加) 過去の膝外傷(半月板損傷や靱帯損傷) O脚などのアライメント異常 遺伝的要因 ■ 主な症状 膝の痛み(特に歩行開始時・階段昇降時) 関節の腫れ・熱感 動作時のこわばり・可動域制限 関節音(ギシギシ、ゴリゴリ) 進行すると膝の変形(O脚) ■ 検査・診断 X線:関節裂隙の狭小化、骨棘(骨のトゲ)、骨硬化、骨嚢胞 MRI:軟骨や半月板の状態評価 身体診察:疼痛誘発テスト、関節可動域の確認 ■ 治療法 保存療法(初期〜中等度) 薬物療法: 消炎鎮痛薬(NSAIDs) ヒアルロン酸関節内注射 漢方薬(牛車腎気丸など) 運動療法: 大腿四頭筋の筋力トレーニング 関節可動域訓練 装具療法: サポーターや足底板 杖使用による荷重軽減 生活指導: 減量、正しい歩行指導、和式→洋式生活への転換 手術療法(進行例) 高位脛骨骨切り術(HTO):若年でO脚がある場合 人工膝関節置換術(TKA):重度の症例やADL障害が強い場合 単顆置換術(UKA):内側のみの変形が強い例  

  • 頚椎椎間板ヘルニアについて

    頸椎椎間板ヘルニア(けいついついかんばんヘルニア)について、簡潔に解説します。 ■ 頸椎椎間板ヘルニアとは? 頸椎(首の骨)と頸椎の間にある椎間板が変性し、中の髄核(ずいかく)が飛び出して神経や脊髄を圧迫する疾患です。首から肩・腕にかけての痛みやしびれ、重症の場合には歩行障害や排尿障害を伴うこともあります。 ■ 主な原因 加齢による椎間板の変性 外傷や長時間のうつむき姿勢(デスクワーク等) 遺伝的素因や喫煙なども関与 ■ 好発年齢 30〜50代の働き盛りに多い ■ 主な症状 症状 説明 首の痛み 動かすと悪化することが多い 肩や腕の痛み・しびれ 神経根の圧迫による 手の脱力 握力の低下や指が動かしにくい 歩行障害・排尿障害 脊髄が圧迫されている場合(頸髄症) ■ 検査 MRI:確定診断の基本 レントゲン:骨の配列異常を確認 神経学的所見:ジャクソンテスト、スパーリングテストなど ■ 治療 保存療法(多くの症例でまず行われる) 安静・頸椎カラー装着 投薬(消炎鎮痛薬、神経障害性疼痛薬) 牽引療法、リハビリ 神経ブロック注射 手術療法(保存療法が無効な場合) 前方除圧固定術(ACDF) 椎間板摘出術 椎弓形成術(脊髄圧迫時) ■ 予後 軽症例では数週間〜数か月で改善 脊髄症を伴う場合は早期の手術が望ましい  

  • 腰椎椎間板ヘルニアについて

    「腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんヘルニア)」について、医学的に簡潔に説明します。 ■ 定義 腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎の椎間板(背骨の間にあるクッションのような軟骨組織)が飛び出して、神経を圧迫する状態を指します。 ■ 主な症状 腰痛 下肢の痛みやしびれ(坐骨神経痛が代表的) 筋力低下(重症例では足が上がりにくくなる) 感覚障害 排尿・排便障害(※重症の「馬尾症候群」では緊急手術が必要) ■ 好発年齢 20〜50歳の男性に多く、重いものを持ち上げたり、長時間座る姿勢が続くと発症しやすいです。 ■ 原因 加齢による椎間板の変性 過度な負荷(重量物運搬など) 喫煙や遺伝的要因も関与する場合があります ■ 診断 MRIが最も有用(神経圧迫の程度を詳細に評価可能) X線では骨の変化を確認 徒手検査(SLRテストなど)も行われます ■ 治療 保存療法(まずはこちらが基本) 薬物治療(NSAIDs・神経障害性疼痛治療薬) 理学療法(ストレッチ・体幹筋トレーニング) ブロック注射(神経根ブロック) 手術療法(以下の場合に考慮) 保存療法で改善がない 筋力低下が進行 尿失禁などの馬尾症候群 → ヘルニア摘出術(顕微鏡下摘出、内視鏡手術など) ■ 予後 多くは保存療法で数週間〜数か月で改善しますが、再発率は10〜15%程度とされています。  

  • 関節リウマチ

    関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は、自己免疫性疾患の一つで、主に関節に慢性的な炎症を引き起こす病気です。以下に概要をまとめます。 🔍 関節リウマチの概要 ■ 定義 関節リウマチは、自己免疫の異常により関節の滑膜に炎症が起き、関節破壊や変形を引き起こす慢性炎症性疾患です。全身性疾患として、関節以外の臓器にも影響を及ぼすことがあります。 ■ 主な症状 朝のこわばり(30分以上) 関節の腫れ・痛み(左右対称) 小関節(指・手首・足趾など)を中心とした多関節炎 倦怠感・発熱・体重減少などの全身症状 ■ 好発年齢・性別 30〜50歳代に多く発症 女性に多い(男性の約3倍) ■ 主な原因 明確な原因は不明だが、遺伝的素因と環境因子(感染、喫煙、ホルモンなど)の関与が示唆されています。 ■ 検査・診断 血液検査 リウマトイド因子(RF) 抗CCP抗体(高特異度) CRP、赤沈(炎症マーカー) 画像検査 X線:関節裂隙の狭小化、骨びらん エコー、MRI:滑膜炎の早期検出 ■ 治療 治療の目的は、関節破壊の予防と症状のコントロールです。 薬物療法 メトトレキサート(MTX):基本薬(anchor drug) 生物学的製剤(抗TNFα抗体など) JAK阻害薬 NSAIDs、ステロイド(補助的) リハビリテーション 関節可動域の維持 筋力強化 手術 関節形成術、関節置換術(関節破壊が進行した場合) ■ 予後 早期診断・早期治療により、寛解を目指すことが可能です。 放置すると、関節変形や日常生活動作(ADL)の低下、全身合併症(心血管疾患など)を引き起こす可能性があります。  

  • 整形外科の主な腰椎疾患

    以下は、整形外科でよく診られる主な腰椎疾患の一覧とその概要です。 ■ 主な腰椎疾患一覧 疾患名 概要 腰椎椎間板ヘルニア 椎間板が突出し、神経根を圧迫。腰痛や坐骨神経痛が生じる。多くは保存療法で改善。 腰部脊柱管狭窄症 加齢や変性により脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される。間欠性跛行が特徴。 腰椎分離症・すべり症 椎弓の疲労骨折(分離)や椎体の前方すべりによる神経圧迫。若年者や高齢者に多い。 変形性腰椎症 加齢により椎体や椎間板が変性し、慢性的な腰痛を呈する。 腰椎圧迫骨折 骨粗鬆症や外傷により椎体が潰れる。高齢女性に多く、急性腰痛が主症状。 仙腸関節障害 仙腸関節の炎症や機能障害により、臀部〜大腿後面にかけての疼痛が出現。 腰椎椎体炎(化膿性脊椎炎など) 細菌感染による椎体や椎間板の炎症。発熱や激しい腰痛が特徴。早期診断が重要。 脊椎腫瘍(転移性含む) 原発または転移による腫瘍が腰椎に発生。進行性の痛みや神経症状を伴う。 馬尾症候群 馬尾神経の障害により、膀胱直腸障害、会陰部のしびれ、両下肢麻痺などをきたす緊急疾患。  

  • 整形外科の主な胸椎疾患

    以下に整形外科で扱う主な胸椎疾患を一覧でご紹介します。診療や説明資料に活用できるよう、簡潔な概要付きでまとめました。 主な胸椎疾患一覧(整形外科領域) 疾患名 概要 胸椎椎間板ヘルニア 胸椎の椎間板が突出し、脊髄や神経を圧迫する。下肢のしびれや歩行障害、膀胱直腸障害を伴うことがある。発症頻度は少ない。 後縦靭帯骨化症(OPLL) 胸椎の後縦靭帯が骨化し、脊髄を圧迫する疾患。徐々に進行し、歩行障害や排尿障害をきたす。 黄色靭帯骨化症(OLF) 黄色靭帯が骨化し、脊髄の後方から圧迫を加える。特に胸椎下部に好発。 脊椎圧迫骨折 骨粗鬆症が原因で胸椎が圧迫骨折を起こす。背部痛・姿勢変化・後弯(円背)などの原因となる。 胸椎後弯変形(円背) 加齢や骨粗鬆症により胸椎が過度に後弯する変形。慢性的な背部痛や体幹前傾姿勢を伴う。 脊柱管狭窄症(胸椎部) 加齢性変化や骨化病変によって脊柱管が狭窄し、脊髄を圧迫。下肢のしびれ、筋力低下、歩行困難など。 脊髄腫瘍(胸椎部) 脊髄やその周囲に発生する良性または悪性腫瘍。胸椎部に発生することもあり、神経障害を呈する。 脊椎感染症(化膿性脊椎炎・脊椎カリエス) 細菌感染や結核などにより、胸椎椎体や椎間板が破壊される。発熱・背部痛・神経障害が見られる。 強直性脊椎炎(AS) 胸椎を含む脊椎全体の靭帯が骨化していく炎症性疾患。体幹の可動性が著しく低下する。若年男性に多い。  

  • 整形外科の主な頚椎疾患

    以下に、整形外科でよくみられる主な頸椎疾患を一覧形式でまとめます: ■ 主な頸椎疾患一覧(整形外科) 疾患名 概要・特徴 頸椎椎間板ヘルニア 頸椎の椎間板が突出し、神経根や脊髄を圧迫。頸部痛、肩・腕の放散痛、しびれ、筋力低下を生じる。 変形性頸椎症(頸椎症性神経根症・脊髄症) 加齢により椎間板や椎骨が変性し、神経根または脊髄を圧迫。手指の巧緻運動障害や歩行障害が出ることも。 後縦靭帯骨化症(OPLL) 後縦靭帯が骨化し脊髄を圧迫する疾患。進行すると脊髄症状(四肢のしびれ・筋力低下)をきたす。 頸椎捻挫(むち打ち症) 外傷(交通事故など)により頸部の軟部組織が損傷。頸部痛、頭痛、肩こり、めまいなど多彩な症状を呈する。 環軸椎亜脱臼 第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)の関節が不安定になる状態。関節リウマチや小児に多い。 関節リウマチによる頸椎病変 頸椎の靭帯や関節が破壊され、亜脱臼や脊髄圧迫を起こす。環軸椎亜脱臼が代表的。 頸椎腫瘍(原発性・転移性) 骨腫瘍やがんの転移により頸椎が障害される。頸部痛や神経症状が出現する。 頸椎感染症(脊椎炎、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎など) 頸椎に感染が波及し、骨破壊や膿瘍形成、脊髄圧迫を起こす。発熱や激しい痛みを伴う。  

  • 整形外科の股関節の病気・けが

    以下は、整形外科で扱う主な股関節疾患の一覧と簡単な説明です。臨床現場で頻度が高く、診断・治療の重要性が高い疾患を中心にまとめています。 🦴【整形外科の主な股関節疾患一覧】 疾患名 概要 変形性股関節症(OA) 加齢や先天性の形態異常(臼蓋形成不全など)により軟骨が摩耗し、疼痛・可動域制限をきたす。女性に多い。 股関節唇損傷 関節唇の断裂により疼痛やクリック音が出現。FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)との関連あり。 大腿骨頭壊死症 ステロイド使用やアルコール摂取が原因となり、骨頭の血流障害から壊死を起こす。進行するとOAに移行。 大腿骨近位部骨折(頸部・転子部) 高齢者の転倒で頻発。早期手術がADL・生命予後に直結する。 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 骨形態異常により運動時に股関節が衝突し、疼痛や可動域制限を生じる。若年〜中年に多い。 単純性股関節炎(滑膜炎) 小児に多く、一過性の股関節炎。ウイルス感染後に起こることが多く、保存的治療で軽快する。 ペルテス病(大腿骨頭骨端壊死症) 3〜10歳の男児に多く、成長期の大腿骨頭に血流障害が起こる。骨頭の扁平化を伴う。 大腿骨頭すべり症(SCFE) 思春期に多い。成長軟骨が弱く、骨頭が後下方にすべる。早期診断・固定が重要。 股関節唇嚢胞 関節唇損傷に伴って生じる嚢胞。神経や筋に圧迫症状を呈することも。 鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群) アスリートに多く、股関節周囲の筋腱・骨膜などの障害が原因。複数の原因が混在する。  

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