整形外科のおもな病気 総論

  • 肉離れについて

    肉離れ(筋挫傷)の概要 ■ 定義 肉離れとは、筋肉が強く引き伸ばされることによって、筋繊維の一部または全部が損傷・断裂する外傷性疾患です。**筋挫傷(muscle strain)**とも呼ばれます。 ■ 好発部位 主に下肢の筋肉に多くみられます: ハムストリングス(大腿後面) 大腿四頭筋(大腿前面) 腓腹筋(ふくらはぎ) ■ 原因・誘因 急なダッシュやジャンプ動作 急停止・方向転換 ウォームアップ不足 筋肉疲労や柔軟性低下 ■ 症状 筋肉部の急激な痛み 断裂部位の圧痛や腫れ 重症例では陥凹の触知や内出血(皮下出血斑) 歩行や運動時の困難 ■ 重症度分類(一般的な3段階) 重症度 内容 回復期間の目安 軽度(Ⅰ度) 筋繊維の微小損傷、痛み軽度 1〜2週間 中等度(Ⅱ度) 筋繊維の部分断裂、腫れや皮下出血あり 4〜12週間 重度(Ⅲ度) 完全断裂、陥凹・高度な痛み 12週間以上〜手術検討 ■ 診断 視診・触診(陥凹や圧痛の確認) エコーやMRIによる筋断裂の評価 ■ 治療 急性期(受傷直後〜48〜72時間) RICE処置(Rest, Ice, Compression, Elevation) 安静・冷却・圧迫・挙上 炎症が強い場合は消炎鎮痛剤の使用 回復期 軽いストレッチ → 筋力トレーニング スポーツ復帰は痛みがなく、筋力バランスが回復した後 重症例 筋腱の完全断裂では手術療法が選択される場合もある ■ 予防 十分なウォームアップとクールダウン 柔軟性トレーニング 適切な筋力トレーニング 再発予防としてのフォーム修正やバイオメカニクス評価  

  • 整形外科の主な腰椎疾患

    以下は、整形外科でよく診られる主な腰椎疾患の一覧とその概要です。 ■ 主な腰椎疾患一覧 疾患名 概要 腰椎椎間板ヘルニア 椎間板が突出し、神経根を圧迫。腰痛や坐骨神経痛が生じる。多くは保存療法で改善。 腰部脊柱管狭窄症 加齢や変性により脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される。間欠性跛行が特徴。 腰椎分離症・すべり症 椎弓の疲労骨折(分離)や椎体の前方すべりによる神経圧迫。若年者や高齢者に多い。 変形性腰椎症 加齢により椎体や椎間板が変性し、慢性的な腰痛を呈する。 腰椎圧迫骨折 骨粗鬆症や外傷により椎体が潰れる。高齢女性に多く、急性腰痛が主症状。 仙腸関節障害 仙腸関節の炎症や機能障害により、臀部〜大腿後面にかけての疼痛が出現。 腰椎椎体炎(化膿性脊椎炎など) 細菌感染による椎体や椎間板の炎症。発熱や激しい腰痛が特徴。早期診断が重要。 脊椎腫瘍(転移性含む) 原発または転移による腫瘍が腰椎に発生。進行性の痛みや神経症状を伴う。 馬尾症候群 馬尾神経の障害により、膀胱直腸障害、会陰部のしびれ、両下肢麻痺などをきたす緊急疾患。  

  • 整形外科の主な胸椎疾患

    以下に整形外科で扱う主な胸椎疾患を一覧でご紹介します。診療や説明資料に活用できるよう、簡潔な概要付きでまとめました。 主な胸椎疾患一覧(整形外科領域) 疾患名 概要 胸椎椎間板ヘルニア 胸椎の椎間板が突出し、脊髄や神経を圧迫する。下肢のしびれや歩行障害、膀胱直腸障害を伴うことがある。発症頻度は少ない。 後縦靭帯骨化症(OPLL) 胸椎の後縦靭帯が骨化し、脊髄を圧迫する疾患。徐々に進行し、歩行障害や排尿障害をきたす。 黄色靭帯骨化症(OLF) 黄色靭帯が骨化し、脊髄の後方から圧迫を加える。特に胸椎下部に好発。 脊椎圧迫骨折 骨粗鬆症が原因で胸椎が圧迫骨折を起こす。背部痛・姿勢変化・後弯(円背)などの原因となる。 胸椎後弯変形(円背) 加齢や骨粗鬆症により胸椎が過度に後弯する変形。慢性的な背部痛や体幹前傾姿勢を伴う。 脊柱管狭窄症(胸椎部) 加齢性変化や骨化病変によって脊柱管が狭窄し、脊髄を圧迫。下肢のしびれ、筋力低下、歩行困難など。 脊髄腫瘍(胸椎部) 脊髄やその周囲に発生する良性または悪性腫瘍。胸椎部に発生することもあり、神経障害を呈する。 脊椎感染症(化膿性脊椎炎・脊椎カリエス) 細菌感染や結核などにより、胸椎椎体や椎間板が破壊される。発熱・背部痛・神経障害が見られる。 強直性脊椎炎(AS) 胸椎を含む脊椎全体の靭帯が骨化していく炎症性疾患。体幹の可動性が著しく低下する。若年男性に多い。  

  • 整形外科の主な頚椎疾患

    以下に、整形外科でよくみられる主な頸椎疾患を一覧形式でまとめます: ■ 主な頸椎疾患一覧(整形外科) 疾患名 概要・特徴 頸椎椎間板ヘルニア 頸椎の椎間板が突出し、神経根や脊髄を圧迫。頸部痛、肩・腕の放散痛、しびれ、筋力低下を生じる。 変形性頸椎症(頸椎症性神経根症・脊髄症) 加齢により椎間板や椎骨が変性し、神経根または脊髄を圧迫。手指の巧緻運動障害や歩行障害が出ることも。 後縦靭帯骨化症(OPLL) 後縦靭帯が骨化し脊髄を圧迫する疾患。進行すると脊髄症状(四肢のしびれ・筋力低下)をきたす。 頸椎捻挫(むち打ち症) 外傷(交通事故など)により頸部の軟部組織が損傷。頸部痛、頭痛、肩こり、めまいなど多彩な症状を呈する。 環軸椎亜脱臼 第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)の関節が不安定になる状態。関節リウマチや小児に多い。 関節リウマチによる頸椎病変 頸椎の靭帯や関節が破壊され、亜脱臼や脊髄圧迫を起こす。環軸椎亜脱臼が代表的。 頸椎腫瘍(原発性・転移性) 骨腫瘍やがんの転移により頸椎が障害される。頸部痛や神経症状が出現する。 頸椎感染症(脊椎炎、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎など) 頸椎に感染が波及し、骨破壊や膿瘍形成、脊髄圧迫を起こす。発熱や激しい痛みを伴う。  

  • 整形外科の股関節の病気・けが

    以下は、整形外科で扱う主な股関節疾患の一覧と簡単な説明です。臨床現場で頻度が高く、診断・治療の重要性が高い疾患を中心にまとめています。 🦴【整形外科の主な股関節疾患一覧】 疾患名 概要 変形性股関節症(OA) 加齢や先天性の形態異常(臼蓋形成不全など)により軟骨が摩耗し、疼痛・可動域制限をきたす。女性に多い。 股関節唇損傷 関節唇の断裂により疼痛やクリック音が出現。FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)との関連あり。 大腿骨頭壊死症 ステロイド使用やアルコール摂取が原因となり、骨頭の血流障害から壊死を起こす。進行するとOAに移行。 大腿骨近位部骨折(頸部・転子部) 高齢者の転倒で頻発。早期手術がADL・生命予後に直結する。 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 骨形態異常により運動時に股関節が衝突し、疼痛や可動域制限を生じる。若年〜中年に多い。 単純性股関節炎(滑膜炎) 小児に多く、一過性の股関節炎。ウイルス感染後に起こることが多く、保存的治療で軽快する。 ペルテス病(大腿骨頭骨端壊死症) 3〜10歳の男児に多く、成長期の大腿骨頭に血流障害が起こる。骨頭の扁平化を伴う。 大腿骨頭すべり症(SCFE) 思春期に多い。成長軟骨が弱く、骨頭が後下方にすべる。早期診断・固定が重要。 股関節唇嚢胞 関節唇損傷に伴って生じる嚢胞。神経や筋に圧迫症状を呈することも。 鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群) アスリートに多く、股関節周囲の筋腱・骨膜などの障害が原因。複数の原因が混在する。  

  • 整形外科の足の病気・けが

    以下に整形外科領域における主な足外科疾患を分類・簡潔にまとめます。足部は解剖学的・機能的に複雑な構造を持つため、疾患も多岐にわたります。 ■ 主な足外科疾患一覧(整形外科) ◉ 1. 前足部の疾患 疾患名 概要 外反母趾 母趾が外側に曲がり、第1中足骨が内反する変形。疼痛・靴障害の原因に。 ハンマートゥ(槌指) 足趾の関節が屈曲拘縮し、突出して靴ずれや痛みを生じる。 中足骨骨頭部痛(モートン病) 第3-4趾間が多く、神経の圧迫による灼熱感やしびれ。 開張足(扁平前足部) 横アーチの低下で中足骨痛、前足部の痛みの原因。 ◉ 2. 中足部・後足部の疾患 疾患名 概要 有痛性外脛骨 舟状骨内側の副骨が歩行時痛を生じる。思春期女子に多い。 偏平足(後天性成人扁平足) 後脛骨筋機能不全によるアーチ崩壊。進行で痛みと変形。 リスフラン関節脱臼・捻挫 中足部の強靭な靱帯損傷による不安定性と荷重時痛。 ◉ 3. 足関節周囲の疾患 疾患名 概要 足関節捻挫 外側靱帯損傷(前距腓靭帯が最多)による腫脹と痛み。 慢性足関節不安定症 捻挫を繰り返し足関節が不安定に。外科的治療対象も。 足関節インピンジメント症候群 骨棘や軟部組織が挟まり、背屈時痛や可動域制限を生じる。 ◉ 4. アキレス腱・踵部の疾患 疾患名 概要 アキレス腱炎・周囲炎 過使用や加齢変性による痛み・腫れ。保存治療が基本。 アキレス腱断裂 典型的にはジャンプ動作での「バチン」という断裂音。 足底腱膜炎 踵の内側に起こる慢性的な痛み。中年以降に多い。 踵骨棘 足底腱膜の牽引により骨棘形成。足底腱膜炎と合併。 ◉ 5. 小児特有の足疾患 疾患名 概要 セーバー病(踵骨骨端症) 成長期に踵骨骨端部が疼痛。スポーツ活動で悪化。 有痛性外脛骨 副骨に起因する中足部内側の痛み(思春期)。 ◉ 6. その他・特殊疾患 疾患名 概要 足根管症候群 脛骨神経の絞扼性障害。足底部のしびれ・疼痛。 Charcot関節(神経病性関節症) 糖尿病などで感覚が低下し、関節が破壊される。 糖尿病性足病変 感染・潰瘍・壊疽などを含む慢性変化。重症化すると切断に至る。  

  • 整形外科の足関節の病気・けが

    整形外科で扱う主な足関節疾患について、以下に代表的な疾患をリストアップし、簡潔に解説を加えます。 🔹 主な足関節疾患一覧 疾患名 概要 足関節捻挫(靭帯損傷) 内反捻挫が多く、前距腓靱帯の損傷が一般的。重症例では靱帯再建術を要することも。 足関節骨折 果部骨折(内果・外果・後果)を含む。脱臼を伴うと整復・固定が必要。手術適応も多い。 距骨骨折 高エネルギー外傷で発生しやすく、無腐性壊死のリスクがあるため慎重な管理が必要。 距骨下関節障害 距骨と踵骨の間の関節障害。後天性扁平足や外傷後変形などに関連。 足関節脱臼 単独は稀で骨折を伴うことが多い。整復と安定化が重要。 足関節変形性関節症 加齢・外傷後に起因することが多く、疼痛と可動域制限が主症状。保存療法〜人工関節置換術まで幅広く対応。 足関節滑膜炎・滑液包炎 関節周囲の滑膜や滑液包の炎症で、腫脹・疼痛を伴う。 外反扁平足(後脛骨筋機能不全) アーチの低下、内反変形、後脛骨筋の機能低下を伴う。成人の後天性扁平足の主因。 足根洞症候群 捻挫などに伴う足根洞(距骨と踵骨の間)の疼痛。保険診断が難しいが、局所注射での診断・治療が有効なことも。 アキレス腱断裂 スポーツ外傷で頻発。保存療法と手術療法の適応判断が重要。 アキレス腱周囲炎・滑液包炎 ランナーに多い。繰り返しの負荷による腱の摩耗と滑液包の炎症。  

  • 整形外科の膝の病気・けが

    以下は整形外科領域で頻繁にみられる主な膝関節疾患の一覧です: 🔹 変性疾患 変形性膝関節症(OA)  関節軟骨の変性・摩耗による痛みと可動域制限。 関節軟骨損傷  外傷や長期使用による軟骨の部分的な損傷。 滑膜ヒダ症候群(タナ障害)  滑膜ヒダが炎症や肥厚により関節に挟まり、痛みを起こす。 🔹 外傷性疾患 前十字靭帯損傷(ACL損傷)  ジャンプ着地や急な方向転換で発症。膝の不安定感を訴える。 後十字靭帯損傷(PCL損傷)  膝の後方からの衝撃で発症。前方不安定感は少ない。 内側側副靭帯損傷(MCL損傷)  外反ストレスにより損傷。膝内側の圧痛や腫脹がみられる。 外側側副靭帯損傷(LCL損傷) 半月板損傷  膝の回旋や屈曲時に「引っかかり感」や「ロッキング」が出現。 膝蓋骨脱臼・亜脱臼  特に若年女性に多く、膝蓋骨が外側に逸脱。 🔹 炎症性疾患・滑液包炎 膝蓋前滑液包炎/鵞足滑液包炎/膝窩滑液包炎  長時間の膝立ちや過使用による炎症。 ベーカー嚢腫(膝窩嚢腫)  関節液貯留による膝裏の腫瘤。関節炎や半月板損傷に合併。 🔹 スポーツ障害・使いすぎ症候群 オスグッド・シュラッター病  成長期の脛骨粗面の炎症。ジャンプや走行を伴う運動で発症。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)  膝蓋骨下極に付着する膝蓋腱の炎症。 腸脛靭帯炎(ランナー膝)  腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の摩擦による外側膝痛。 🔹 その他の代表的疾患 離断性骨軟骨炎(OCD)  骨と軟骨が剥離・壊死し、関節内遊離体を形成することも。 関節リウマチ(RA)による膝関節炎  

  • 整形外科の肩の病気・けが

    整形外科でよく扱う主な肩の疾患は以下のとおりです。各疾患には簡単な概要も添えています。 🔹 主な肩関節疾患一覧 疾患名 概要 肩関節周囲炎(五十肩) 肩関節の炎症により、痛みと可動域制限を伴う。加齢に伴うことが多く、自然治癒することもあるがリハビリが重要。 腱板断裂 棘上筋などの腱板が断裂し、挙上困難や夜間痛を伴う。加齢や外傷が原因。MRIで診断し、保存療法または手術適応となる。 石灰沈着性腱板炎 腱板に石灰が沈着して急性の炎症と激痛を生じる。自然吸収を待つ、注射、穿刺・吸引などが治療法。 反復性肩関節脱臼 若年者に多く、特にスポーツ外傷後に反復性となる。バンカート損傷やヒルサックス病変を伴う。関節鏡手術の適応も。 肩関節拘縮 手術や外傷後、長期固定などにより関節が硬くなり、可動域制限が生じる。リハビリでの可動域改善が目標。 肩鎖関節脱臼 肩への直接外傷(転倒など)で鎖骨が上方へずれる。重症度により保存療法または手術を選択。 上腕二頭筋長頭腱炎・断裂 肩前部の痛み。繰り返しの使用や腱板病変に合併。断裂により力こぶの変形(ポパイサイン)を呈することも。 変形性肩関節症 関節軟骨の摩耗により痛みと可動域制限。進行すれば人工肩関節置換術が適応されることも。 胸郭出口症候群 肩から手にかけてのしびれやだるさを訴える。神経や血管の圧迫による症状。運動療法中心の治療。  

  • 整形外科の肘の病気・けが

    以下は、整形外科でよく見られる主な肘の疾患の一覧と概要です。 🔹 主な肘関節疾患一覧(整形外科) 疾患名 概要 上腕骨外側上顆炎(テニス肘) 手関節背屈筋群の過使用による外側上顆部の疼痛。中年女性に多く、握力低下や手の使用で痛みが増悪。 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘) 手関節屈筋群の過使用による内側上顆部の疼痛。野球やゴルフなど繰り返しの動作が原因。 肘部管症候群 尺骨神経の絞扼性障害。小指・環指のしびれ、筋萎縮、握力低下。肘の屈曲や外反変形がリスク因子。 変形性肘関節症 加齢や外傷後に起こる肘関節の軟骨変性。可動域制限、運動時痛、ロッキングなどが出現。 肘離断性骨軟骨炎(OCD) 成長期の野球少年に多い。投球や過度の使用で上腕骨小頭の骨軟骨が壊死・剥離。 肘頭骨折 転倒や直接外力で発生。三頭筋の牽引力により転位しやすく、手術が必要な場合も多い。 上腕骨顆上骨折 小児に多い外傷。神経・血管損傷のリスクがあり、整復・固定が必要。 Monteggia脱臼骨折 尺骨骨幹部骨折+橈骨頭脱臼の複合損傷。小児に多く、整復と固定を要する。 肘滑液包炎(肘頭滑液包炎) 肘頭部の腫脹・圧痛。長時間の圧迫や外傷が原因。感染性の場合は抗菌薬や穿刺が必要。 関節リウマチによる肘関節障害 滑膜炎により肘関節の腫脹、疼痛、可動域制限。進行すると変形性関節症を伴う。 肘内障(小児) 幼児の肘の亜脱臼。急な手引きで輪状靭帯から橈骨頭が部分的に逸脱。整復で治癒。  

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