肩関節周囲炎について
**肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)**は、俗に「五十肩(ごじゅうかた)」とも呼ばれ、肩関節の痛みと可動域制限を主な症状とする疾患群です。以下に概要をまとめます。
■ 概要
定義
肩関節周囲の軟部組織(腱、靭帯、関節包、滑液包など)に炎症や癒着が起こり、痛みと運動制限をきたす疾患。明らかな外傷や関節の構造的異常がない中年以降の方に多い。
■ 原因・病態
明確な原因は不明(特発性)。
加齢に伴う腱板や関節包の変性が関与。
関節包の炎症 → 線維化 → 拘縮(関節の固まり)という経過をとる。
糖尿病や甲状腺疾患との関連もある。
■ 症状
自発痛:特に夜間痛(寝返り時に強くなる)。
運動時痛:服の脱ぎ着、髪を結ぶ動作、背中に手を回すなどが困難。
可動域制限:外転・外旋・内旋の制限。
経過:
炎症期(数週間~数か月):強い痛み、特に夜間痛が主。
拘縮期(2〜6か月):痛みは軽減するが可動域制限が目立つ。
回復期(6か月~1年以上):徐々に可動域が回復。
■ 診断
問診・理学所見:夜間痛と可動域制限の確認。
画像診断:
X線:骨に異常なし。
MRI:腱板断裂との鑑別。関節包の肥厚や滑液包の炎症所見。
■ 鑑別診断
腱板断裂
石灰沈着性腱炎
関節唇損傷(SLAP病変)
頸椎症による関連痛(神経根症)
■ 治療
保存療法(第一選択)
薬物療法:NSAIDs、湿布、夜間痛対策の鎮痛薬
注射:関節内ステロイド注射(炎症期に有効)
物理療法:温熱療法、超音波療法
リハビリ:ストレッチ、可動域訓練(拘縮期以降)
手術療法(まれ)
関節鏡下授動術(拘縮が強く、保存療法で改善しない場合)
■ 予後
多くは1~2年で自然軽快するが、リハビリを怠ると可動域制限が残ることもある。
再発は少ないが、反対側の肩にも起こることがある(約20~30%)。