整形外科のおもな病気 各論

足関節捻挫について

以下に「足関節捻挫(そくかんせつねんざ)」の概要を簡潔にまとめます。


■ 足関節捻挫(足首のねんざ)

【概要】

足関節捻挫は、足首をひねった際に靭帯が損傷するケガです。スポーツや段差での踏み外しなど、日常的によく起こります。

【原因】

  • 着地時の足のねじれ

  • 不安定な地面での歩行

  • スポーツ動作(ジャンプ・方向転換)

【好発部位】

  • **外側靭帯損傷(前距腓靭帯が最多)**が90%以上
    内側靭帯(デルタ靭帯)損傷は比較的まれ

【症状】

  • 足首の腫れ

  • 痛み

  • 皮下出血(内出血)

  • 歩行時の違和感や不安定感

【重症度分類】

  1. Ⅰ度:靭帯の微細損傷(軽度)

  2. Ⅱ度:靭帯の部分断裂(中等度)

  3. Ⅲ度:靭帯の完全断裂(重度)

【診断】

  • 理学所見(前方引き出しテストなど)

  • X線検査(骨折の除外)

  • 超音波・MRI(重症例や再発例で使用)

【治療】

  • RICE処置(Rest・Ice・Compression・Elevation)

  • 固定(テーピング・サポーター・ギプス)

  • 早期のリハビリ(腫れ軽減後に可動域訓練・筋力強化)

  • 重度例では手術適応となる場合もある

【予後】

  • 軽症例では1〜2週間で改善

  • 中等例では4週以上、重症例は8週以上を要します。
  • 再発予防が重要(靭帯のゆるみが残ると慢性不安定性に)


 

足関節捻挫の分類や重症度評価には、従来の「グレード分類」に加えて、靭帯損傷の具体的な部位やMRI・エコーを用いた画像評価なども活用されるようになってきています。以下に最新の分類を整理してお伝えします。

✅ 足関節捻挫の分類(最新の知見を含む)

1. 

従来のグレード分類(重症度)

足関節外側靭帯(前距腓靭帯:ATFLなど)の損傷程度に応じた分類:

グレード

損傷内容

臨床症状

Grade I

靭帯の微細損傷(伸展)

軽度の腫脹・圧痛、歩行可能、関節不安定感なし

Grade II

靭帯の部分断裂

中等度の腫脹・皮下出血、疼痛あり、歩行困難

Grade III

靭帯の完全断裂

著明な腫脹・皮下出血、関節不安定、荷重不能

2. 

受傷メカニズムによる分類

以下の損傷パターンに基づき、より詳細に分類されることがあります。

タイプ

損傷靭帯

特徴

外側型(最多)

前距腓靭帯(ATFL)、踵腓靭帯(CFL)、後距腓靭帯(PTFL)

足部内反+底屈

内側型

三角靭帯

稀、足部外反

高位型(シンデスモーシス損傷)

下脛腓靭帯(AITFLなど)

外旋力、前距腓靭帯に加え上方の結合も損傷、回復に時間がかかる

3. 

画像評価による分類(MRI・超音波)

MRIやエコーを用いて靭帯損傷の程度を定量的に評価することで、より正確な重症度の把握が可能に。

例:MRIによるATFL損傷分類(参考:最新研究より)

分類

損傷の特徴

Grade 0

正常

Grade 1

線維構造の軽度不明瞭化(腫脹)

Grade 2

線維構造の部分的断裂

Grade 3

完全断裂、gapあり

4. 

臨床的重症度評価(最新トレンド)

重症度を「機能的障害の程度」や「不安定性の有無」で評価するアプローチもあります。

分類

基準

軽症

通常歩行可能、活動制限軽度

中等症

歩行困難、腫脹・皮下出血中等度、不安定感

重症

荷重不能、関節不安定性明瞭、明らかな靭帯断裂

🆕 近年注目の分類要素

  • **シンデスモーシス損傷(高位捻挫)**の有無を明確にする
  • 再発性 or 初回損傷の違い
  • スポーツ復帰への影響(リスク分類)

🩺 まとめ

観点

内容

従来分類

Grade I–IIIの3段階

現在の主流

損傷靭帯の部位、程度、画像診断、症状を複合的に評価

臨床応用

スポーツ復帰時期、固定の期間、手術適応などの判断に活用

 

岸谷整形外科クリニック

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