整形外科のおもな病気 各論

肩関節周囲炎について

肩の疾患

五十肩(肩関節周囲炎)について

肩が痛くて動かせない ― その原因と治療法

40代や50代になると、肩が痛くなって動かせなくなることがあります。この症状は「五十肩」の通称で知られていますが、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。

肩の痛みと可動域の制限が主な症状で、特に夜間に痛みが強くなることが特徴です。多くの患者さんは「いつかは治るはず」と思いながらも、症状が長く続くことで日常生活に支障をきたします。しかし、適切な診断と治療を受ければ、着実に改善することができます。

こんな症状はありませんか?

  • 肩が痛くて、夜間に寝返りを打つときに強い痛みがある
  • 服を脱ぎ着する動作が困難である
  • 背中に手を回す動作(ブラジャーを留める、帯を結ぶなど)ができない
  • 髪を結ぶなど頭の上に腕を上げる動作が困難
  • 肩をほとんど動かすことができない時期がある
  • 2週間以上肩の痛みと違和感が続いている

五十肩(肩関節周囲炎)とは?

五十肩は、肩関節の周囲にある軟部組織(腱、靭帯、関節包、滑液包など)に炎症が起こることで、肩の痛みと動かせなくなる状態が生じる疾患です。

「関節包」という肩関節を包み込む膜が炎症を起こし、やがて線維化(硬くなること)し、最終的に「拘縮」(関節が固まること)に至ります。

特に40~60代の中年期に多く発症し、外傷がないのに突然症状が出ることがほとんどです。また、女性よりも男性に、そして片側の肩だけでなく、反対側の肩にも20~30%の確率で起こることがあります。

五十肩の原因と病態

五十肩の原因ははっきり分かっていないことが多いため、医学的には「特発性」(とくはつせい)と呼ばれます。しかし、以下のような要因が関係していると考えられています。

発症のメカニズム

  • 加齢による変化 ― 年を重ねるにつれ、肩を支える腱や靭帯が老化し、弾性を失う
  • 血流の低下 ― 肩関節周囲の血流が悪くなり、炎症が起こりやすくなる
  • 関節包の炎症 ― 関節を包む膜が炎症を起こすと、関節液の分泌が減り、摩擦が増える
  • 線維化と拘縮 ― 炎症が続くと、関節包が厚くなって縮み、肩が動かなくなる

関連する基礎疾患

  • 糖尿病
  • 甲状腺疾患
  • 脂質異常症や高血圧などの生活習慣病

五十肩の症状と進行パターン

五十肩の症状は、時間とともに変化する特徴があります。通常、以下の3つの段階を辿ります。

炎症期(数週間~数か月)

最初の段階で、肩関節周囲に炎症が起こります。

  • 自発痛:特に夜間痛が強い。寝返りを打つときに目が覚めるほどの痛みを感じることも
  • 運動時痛:肩を動かそうとすると激しく痛む
  • 可動域制限:肩が少し動かなくなり始める
  • 発熱やだるさを伴うことはない

拘縮期(2~6か月)

炎症が落ち着き始めますが、関節包が硬くなって、肩が固まる段階です。

  • 痛みは軽減する傾向
  • 可動域制限が目立つ ― 服の脱ぎ着、髪を結ぶ、背中に手を回すなどが困難
  • 安静時の痛みは減るが、動かそうとすると痛む

回復期(6か月~1年以上)

関節包の硬さが少しずつ取れ、肩の動きが回復していく段階です。

  • 痛みが徐々に減少
  • 可動域が少しずつ広がる
  • リハビリを継続することで回復が加速

検査・診断

当院では、以下の検査を組み合わせて、五十肩の診断と、より重篤な疾患との鑑別を行います。

検査方法目的・わかること
問診と理学所見夜間痛の有無、肩の動きの制限パターンを確認。「きりきり舞い」や「ペイン・スピード」テストなど
超音波検査(エコー)肩の軟部組織の炎症や関節包の肥厚を直接確認。リアルタイムで肩の動きを観察
MRI検査腱板断裂など他の疾患との鑑別に有効。関節包の肥厚や滑液包の炎症所見を詳しく評価
X線(レントゲン)

骨に異常がないことを確認。石灰沈着性腱炎との鑑別

当院での治療

五十肩の治療は、段階に応じて異なります。当院では、患者さんの症状に合わせた最適な治療を提供しています。

診断と詳細評価

まず当院では、超音波検査(エコー)とMRI検査により、関節包の炎症状態や腱板損傷の有無を正確に把握します。これにより、他の疾患との鑑別を行い、最適な治療計画を立てます。

炎症期の治療

初期段階では、炎症をコントロールすることが最優先です。

  • ステロイド注射 ― 関節内注射により、炎症を迅速に抑制します。特に初期段階で効果的
  • 消炎鎮痛薬(NSAIDs) ― 内服薬や外用薬で痛みを管理
  • 温熱療法・超音波療法 ― 物理療法で血流を改善し、組織の修復を促進
  • ハイドロリリース(超音波ガイド下) ― 超音波を見ながら、炎症部位に生理食塩水を注入して癒着を剥離します。腱板周辺や関節包の癒着解放に有効

拘縮期~回復期の治療

炎症が落ち着いた後は、失われた動きを取り戻すことが重要です。

  • リハビリテーション(理学療法士による可動域訓練) ― 専門の理学療法士による段階的なストレッチと筋力訓練が最も重要です。焦らず、ゆっくりと肩の動きを拡大していきます
  • 体外衝撃波治療 ― 衝撃波により、硬くなった関節包の線維化を改善し、血流を促進します。肩関節周囲の組織の治癒を加速させます
  • ハイドロリリース(超音波ガイド下) ― 拘縮期の癒着解放に繰り返し行うことで、可動域の改善を促進

継続的な管理

  • 定期的な再評価と治療計画の調整
  • 自宅でのストレッチ指導と運動プログラム
  • 必要に応じた追加のステロイド注射(数週間~数か月間隔)

手術療法(稀)

適切な保存療法を行っても、1年以上経過しても症状が改善しない場合、または日常生活に大きな支障がある場合に限り、関節鏡下授動術(きょうかんなか)を検討します。この手術では、拘縮した関節包を部分的に切離し、肩の動きを改善します。

日常生活で気をつけること

医学的な治療と並行して、日常生活での過ごし方が回復を大きく左右します。

炎症期(初期段階)

  • 安静を心がける ― 痛い肩を無理に動かさない
  • 夜間痛対策 ― クッションで肩を支え、寝返り時の負担を軽減
  • 患部を温める ― 温かいシャワーや温湿布で血流を改善

拘縮期~回復期

  • 理学療法士の指導に従う ― 無理なストレッチは逆効果になる場合があります
  • 段階的にリハビリを進める ― 焦らず、少しずつ可動域を広げる
  • 家での運動を継続する ― 週3~4回以上、毎日のストレッチが効果的

全般的な注意点

  • 定期的な受診 ― 医師の指導を受けながら進めることが重要です
  • 反対側の肩の予防 ― 反対側の肩にも起こる可能性があるため、肩を大事にしましょう
  • 基礎疾患の管理 ― 糖尿病や甲状腺疾患がある場合は、その治療も継続してください

肩の痛みや違和感がある方は、お早めにご相談ください

夜間に肩が痛くなる、肩が動かなくなるなどの症状がある場合は、早期の診断と治療が重要です。五十肩は放置すると症状が長く続く可能性があります。ハイドロリリースや体外衝撃波治療などの最新治療により、回復を加速させることができます。お気軽にご相談ください。

よくある質問

五十肩は自然に治りますか?

多くの五十肩は1~2年で自然に軽快しますが、リハビリを怠ると可動域制限が残ることがあります。早期に適切な治療とリハビリを受けることで、回復を大きく加速させることができます。

ハイドロリリースとは何ですか?

ハイドロリリースは、超音波で患部を見ながら、生理食塩水を注入して癒着を剥離する治療法です。腱板周辺や関節包の癒着を改善し、肩の動きを取り戻すのに効果的です。当院では、超音波ガイド下で正確に行うため、安全かつ効果的です。

体外衝撃波治療はどのくらい効果があります?

体外衝撃波治療は、硬くなった関節包の線維化を改善し、血流を促進します。特に拘縮期以降の肩の動きを取り戻すのに有効です。複数回の治療により、さらに効果が期待できます。

ステロイド注射は何回まで受けられますか?

ステロイド注射は、炎症期に特に効果的です。通常、数週間~数か月間隔で複数回行うことがありますが、医師の判断により調整します。無制限に行うものではなく、患者さんの経過に応じて慎重に使用します。

反対側の肩も痛くなったら、どうすればいいですか?

五十肩を発症した患者さんの20~30%が、反対側の肩にも起こります。反対側の肩に違和感や痛みが出たら、早期に受診してください。早期に治療を開始すれば、初回ほど症状を長く引きずらない可能性があります。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を行うものではありません。症状がある場合は医師の診察を受けてください。

最終更新日:2026年3月

岸谷整形外科クリニック

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