スポーツ障害

  • 膝半月板損傷

    以下に**半月板損傷(meniscus injury)**の概要を、整形外科的に簡潔にまとめます。 ■ 半月板損傷とは 膝関節内の**半月板(内側・外側)**に裂け目や断裂が生じた状態。荷重分散・関節安定性に関与し、損傷すると痛みや可動制限が生じます。 ■ 原因 急性損傷:スポーツなどでの膝のひねり・屈伸動作  例:ジャンプ着地時の膝回旋、コンタクトプレー 変性断裂:中高年に多く、加齢で脆くなった半月板に小さな外力が加わる ■ 主な症状 膝の疼痛(特に内側) 引っかかり感(ロッキング) 可動域制限 腫脹(関節水腫) 歩行や屈伸時の違和感 ■ 検査 画像検査: X線(骨病変除外) MRI:高感度・高特異度で断裂の位置・形態を確認 ■ 分類(形態) 縦断裂(縦裂) 横断裂(水平断裂) バケツ柄断裂(ロッキングを起こしやすい) 変性断裂(中高年に多い) ■ 治療方針 分類 方針 症状軽度・非ロッキング 保存療法(物理療法、消炎鎮痛薬、筋トレ) 若年者・急性・縦断裂 関節鏡視下縫合術(保存的価値あり) 変性断裂・高度損傷 関節鏡視下部分切除術(部分摘出) ロッキングあり 手術が第一選択(バケツ柄断裂など) ■ スポーツ復帰目安(参考) 保存療法:2〜6週間程度 関節鏡切除術後:4〜6週前後 縫合術後:3〜4か月(荷重制限・ROM制限期間あり) ■ 合併症・注意点 放置すると軟骨損傷〜変形性膝関節症のリスク 高齢者では再発率・再断裂に注意  

  • シーバー病

    シーバー病(Sever病)は、**踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)**とも呼ばれ、小児の踵(かかと)の成長痛として知られています。以下に概要をまとめます。 ■ シーバー病(Sever病)の概要 項目 内容 別名 踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう) 好発年齢 8〜13歳頃の活発な男児に多い(女子ではやや低年齢) 原因 成長期の踵骨骨端核への繰り返す牽引ストレスや圧迫力(特にアキレス腱の牽引) 誘因 サッカー、バスケットボール、陸上などジャンプや走る動作の多いスポーツ活動 主な症状 – 踵の痛み(特に運動後や朝の一歩目)- 踵を押すと痛がる(圧痛)- つま先立ちや走ると痛みが増す 診断方法 – 臨床所見が中心(圧痛+運動誘発)- レントゲンで骨端線の拡大や不整を確認(ただし所見がないことも) 治療 原則保存療法(成長により自然治癒)1. 安静/スポーツ制限2. アイシング(運動後)3. ヒールカップやインソールの使用4. アキレス腱やふくらはぎのストレッチ5. 鎮痛薬(必要時) 予後 成長とともに自然に軽快することが多い。通常は数週間〜数ヶ月で改善。 復帰の目安 痛みが完全に消え、つま先立ちや走行で痛みがないこと  

  • 腰椎分離症 スポーツ障害

    小児の**腰椎分離症(ようついぶんりしょう)**について、以下に概要をまとめます。 ■ 腰椎分離症とは 腰椎の後方部分(椎弓)がストレスによって疲労骨折を起こし、分離状態となる病態です。小児期(特に成長期のスポーツ少年)に多くみられます。 ■ 好発年齢・性別 年齢:10〜15歳の成長期 性別:男子に多い スポーツ:野球、サッカー、バレーボール、体操など、腰を反らす・捻る動作が多い競技 ■ 主な症状 腰の鈍痛(特に運動後) 腰の反らし動作やジャンプ時の痛み 長時間の立位や歩行で悪化 神経症状は通常なし(ただし進行するとすべり症を合併し、坐骨神経痛を伴うことも) ■ 診断 1. X線 側面像や斜位像でスコッチテリアサイン(犬の首が切れたような像) 初期では変化がない場合もある 2. MRI 骨の炎症反応(初期のストレス反応)を検出可能 早期診断に有用 3. CT 骨折線の評価に有用(特に偽関節化の有無) ■ 治療方針 ● 初期・骨癒合が期待できる時期 スポーツ休止(2〜3か月) 西良式コルセット装着 骨癒合を目指す保存療法が原則 痛みが軽減すれば、理学療法で体幹筋強化・柔軟性向上を行う ● 偽関節(骨癒合が得られない場合) 多くは保存加療でスポーツ復帰可能 持続する痛み・腰椎すべり症の進行例では手術を検討(稀) ■ 予後 早期診断・早期治療で骨癒合が可能 偽関節でも疼痛コントロールと運動指導によりスポーツ復帰可能 ■ ポイント 成長期に多い疲労骨折で、安静が最も大切 無理に運動を続けると骨癒合が得られなくなる 定期的な画像診断で治癒過程を確認しながら段階的復帰を行う  

  • 肉離れの運動復帰基準

    肉離れからの運動復帰の基準は、損傷の重症度によって異なりますが、以下のような臨床的評価項目をクリアすることが一般的な目安とされています。 ■ 運動復帰のための基本的な判断基準 項目 判定基準 ※疼痛の消失 必須 運動時・ストレッチ時に痛みがない(再発リスクが高いため痛みがある場合は不可)・圧痛がない ※可動域の回復 必須 損傷部位の関節の可動域が健側と同等 筋力の回復 筋力テストで健側の90%以上を確保(等尺性収縮時) ジャンプ・ランテスト 片脚ジャンプ・ダッシュ・カット動作で疼痛なく実施可能 再発予防トレーニング 筋力・柔軟性・バランスなどを含めた再発予防メニューを完了している ■ 重症度別の運動復帰までの目安(あくまで一般的) 重症度 競技復帰までの期間目安 軽度(Ⅰ度) 約1〜2週間 中等度(Ⅱ度) 約4〜12週間 重度(Ⅲ度) 12週以上(手術例ではさらに長期) ■ 医療的チェック(必要に応じて) 超音波またはMRIでの治癒確認 理学療法士やスポーツドクターによる最終評価 ■ 備考 焦って早期復帰すると再発率が高くなる(再発率は30〜40%とも) 特に過去に肉離れを起こした部位では慎重な復帰判断が必要  

  • オスグット病

    オスグッド病(正式名称:オスグッド・シュラッター病)は、成長期のスポーツをする子どもに多くみられる膝のスポーツ障害です。以下に概要をまとめます。 ■ オスグッド病の概要 項目 内容 別名 オスグッド・シュラッター病脛骨粗面骨軟骨炎 好発年齢 小学校高学年~中学生(10〜15歳)男子に多い 原因 成長期における太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)が、膝の下の骨(脛骨粗面)を繰り返し引っ張ることにより炎症が起きる 症状 – 膝下の隆起部(脛骨粗面)の痛み・腫れ- 押すと痛い(圧痛)- 走ったりジャンプ時に痛む- 膝を曲げづらいことも 診断 – 問診・身体診察(圧痛、隆起の確認)- レントゲン(脛骨粗面の骨の変化)で確認可能 治療 保存的治療が基本:- スポーツ休止や制限(特にジャンプ・ダッシュ)- アイシングや鎮痛剤(必要に応じて)- ストレッチ(大腿四頭筋の柔軟性改善)- サポーター・バンドの使用 予後 成長に伴い自然に治ることが多いが、膝下の隆起が残ることもある 予防 運動前後のストレッチ無理のない練習計画    

  • 足関節捻挫について

    以下に「足関節捻挫(そくかんせつねんざ)」の概要を簡潔にまとめます。 ■ 足関節捻挫(足首のねんざ) 【概要】 足関節捻挫は、足首をひねった際に靭帯が損傷するケガです。スポーツや段差での踏み外しなど、日常的によく起こります。 【原因】 着地時の足のねじれ 不安定な地面での歩行 スポーツ動作(ジャンプ・方向転換) 【好発部位】 **外側靭帯損傷(前距腓靭帯が最多)**が90%以上 内側靭帯(デルタ靭帯)損傷は比較的まれ 【症状】 足首の腫れ 痛み 皮下出血(内出血) 歩行時の違和感や不安定感 【重症度分類】 Ⅰ度:靭帯の微細損傷(軽度) Ⅱ度:靭帯の部分断裂(中等度) Ⅲ度:靭帯の完全断裂(重度) 【診断】 理学所見(前方引き出しテストなど) X線検査(骨折の除外) 超音波・MRI(重症例や再発例で使用) 【治療】 RICE処置(Rest・Ice・Compression・Elevation) 固定(テーピング・サポーター・ギプス) 早期のリハビリ(腫れ軽減後に可動域訓練・筋力強化) 重度例では手術適応となる場合もある 【予後】 軽症例では1〜2週間で改善 中等例では4週以上、重症例は8週以上を要します。 再発予防が重要(靭帯のゆるみが残ると慢性不安定性に)   足関節捻挫の分類や重症度評価には、従来の「グレード分類」に加えて、靭帯損傷の具体的な部位やMRI・エコーを用いた画像評価なども活用されるようになってきています。以下に最新の分類を整理してお伝えします。 ✅ 足関節捻挫の分類(最新の知見を含む) 1.  従来のグレード分類(重症度) 足関節外側靭帯(前距腓靭帯:ATFLなど)の損傷程度に応じた分類: グレード 損傷内容 臨床症状 Grade I 靭帯の微細損傷(伸展) 軽度の腫脹・圧痛、歩行可能、関節不安定感なし Grade II 靭帯の部分断裂 中等度の腫脹・皮下出血、疼痛あり、歩行困難 Grade III 靭帯の完全断裂 著明な腫脹・皮下出血、関節不安定、荷重不能 2.  受傷メカニズムによる分類 以下の損傷パターンに基づき、より詳細に分類されることがあります。 タイプ 損傷靭帯 特徴 外側型(最多) 前距腓靭帯(ATFL)、踵腓靭帯(CFL)、後距腓靭帯(PTFL) 足部内反+底屈 内側型 三角靭帯 稀、足部外反 高位型(シンデスモーシス損傷) 下脛腓靭帯(AITFLなど) 外旋力、前距腓靭帯に加え上方の結合も損傷、回復に時間がかかる 3.  画像評価による分類(MRI・超音波) MRIやエコーを用いて靭帯損傷の程度を定量的に評価することで、より正確な重症度の把握が可能に。 例:MRIによるATFL損傷分類(参考:最新研究より) 分類 損傷の特徴 Grade 0 正常 Grade 1 線維構造の軽度不明瞭化(腫脹) Grade 2 線維構造の部分的断裂 Grade 3 完全断裂、gapあり 4.  臨床的重症度評価(最新トレンド) 重症度を「機能的障害の程度」や「不安定性の有無」で評価するアプローチもあります。 分類 基準 軽症 通常歩行可能、活動制限軽度 中等症 歩行困難、腫脹・皮下出血中等度、不安定感 重症 荷重不能、関節不安定性明瞭、明らかな靭帯断裂 🆕 近年注目の分類要素 **シンデスモーシス損傷(高位捻挫)**の有無を明確にする 再発性 or 初回損傷の違い スポーツ復帰への影響(リスク分類) 🩺 まとめ 観点 […]

  • 肉離れについて

    肉離れ(筋挫傷)の概要 ■ 定義 肉離れとは、筋肉が強く引き伸ばされることによって、筋繊維の一部または全部が損傷・断裂する外傷性疾患です。**筋挫傷(muscle strain)**とも呼ばれます。 ■ 好発部位 主に下肢の筋肉に多くみられます: ハムストリングス(大腿後面) 大腿四頭筋(大腿前面) 腓腹筋(ふくらはぎ) ■ 原因・誘因 急なダッシュやジャンプ動作 急停止・方向転換 ウォームアップ不足 筋肉疲労や柔軟性低下 ■ 症状 筋肉部の急激な痛み 断裂部位の圧痛や腫れ 重症例では陥凹の触知や内出血(皮下出血斑) 歩行や運動時の困難 ■ 重症度分類(一般的な3段階) 重症度 内容 回復期間の目安 軽度(Ⅰ度) 筋繊維の微小損傷、痛み軽度 1〜2週間 中等度(Ⅱ度) 筋繊維の部分断裂、腫れや皮下出血あり 4〜12週間 重度(Ⅲ度) 完全断裂、陥凹・高度な痛み 12週間以上〜手術検討 ■ 診断 視診・触診(陥凹や圧痛の確認) エコーやMRIによる筋断裂の評価 ■ 治療 急性期(受傷直後〜48〜72時間) RICE処置(Rest, Ice, Compression, Elevation) 安静・冷却・圧迫・挙上 炎症が強い場合は消炎鎮痛剤の使用 回復期 軽いストレッチ → 筋力トレーニング スポーツ復帰は痛みがなく、筋力バランスが回復した後 重症例 筋腱の完全断裂では手術療法が選択される場合もある ■ 予防 十分なウォームアップとクールダウン 柔軟性トレーニング 適切な筋力トレーニング 再発予防としてのフォーム修正やバイオメカニクス評価  

  • 野球肘について

    「野球肘」は、主に投球動作を繰り返すことで肘に負担がかかり発症する使いすぎ(オーバーユース)による障害です。特に成長期の野球少年に多く見られます。 ■ 分類 野球肘は、大きく以下の3つに分類されます: 種類 病態 主な原因・症状 内側型(牽引型) 上腕骨内側上顆の成長軟骨に牽引力がかかる 肘の内側の痛み、内側上顆の裂離損傷、小児では骨端線離開 外側型(圧迫型) 上腕骨小頭と橈骨頭の間の関節軟骨や骨に圧迫が加わる 肘の外側の痛み、離断性骨軟骨炎(OCD) 後方型(インピンジメント型) 肘の後方の骨同士がぶつかり合う 肘の後方の痛み、骨棘形成(ベネット病変など) ■ 好発年齢 小学生~中学生に多い(特にピッチャーやキャッチャー) ■ 主な症状 投球時や投球後の肘の痛み 肘の圧痛(特に内側や外側) 可動域制限(進行すると伸展制限など) 運動後の腫れや違和感 ■ 診断 問診(投球頻度・痛みの経過など) 触診・徒手検査(内側上顆圧痛、外側軟骨部圧痛など) X線(骨端線離開、骨棘、遊離体) MRI・CT(OCDの評価) 超音波検査(エコー)(成長線や骨軟骨損傷の早期発見) ■ 治療 軽度 安静(投球中止)、ストレッチ、物理療法、投球フォーム指導 中~重度 長期間の投球中止、ギプス固定、手術(遊離体摘出、骨軟骨修復)など ■ 予防 投球数の制限(学年ごとの基準あり) 投球フォームの改善 十分なウォーミングアップとクールダウン ポジションのローテーション(投手専任を避ける) 肘の違和感を軽視せず早期受診 ■ 備考 特に**離断性骨軟骨炎(OCD)**は早期発見・早期治療が非常に重要。進行すると関節ネズミ(遊離体)となり手術が必要。  

お気軽に
お問い合わせください

fixed reservefixed reserve