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股関節

  • 変形性股関節症

    変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう / Osteoarthritis of the Hip) ■ 概要 変形性股関節症は、股関節の関節軟骨がすり減り、関節の変形・痛み・可動域制限が進行する疾患です。進行性であり、高齢者に多いものの、若年者にも先天性の股関節疾患が原因で発症することがあります。 ■ 主な原因 一次性(特発性):加齢や体重増加に伴う慢性的な負荷 二次性(日本では多い): 先天性股関節脱臼(先天性股関節形成不全) Perthes病、臼蓋形成不全、大腿骨頭すべり症などの既往 外傷、感染、関節リウマチ ■ 症状 股関節の運動時痛(特に立ち上がり・歩行時) 可動域制限(あぐら、正座が困難) 長時間の歩行や階段昇降での疲労感 進行すると安静時痛も出現 歩行時の跛行(はこう) 脚長差、股関節周囲の筋力低下 ■ 診断 問診・視診・触診 X線検査:関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨硬化、嚢胞形成 必要に応じてMRI・CT:軟骨や骨頭の詳細評価 ■ 病期分類(Kellgren-Lawrence分類など) Stage I:関節裂隙の狭小化軽度 Stage II:骨棘形成、裂隙狭小中等度 Stage III〜IV:高度狭小化、骨頭の変形・破壊 ■ 治療 ● 保存療法(初期〜中等度) 体重管理(減量) 杖・歩行補助具の使用 股関節周囲筋の筋力トレーニング(大腿四頭筋・中殿筋強化) 消炎鎮痛剤(NSAIDs) 関節注射(ヒアルロン酸、ステロイド) 物理療法(温熱・電気など) ● 手術療法(進行期・保存療法無効時) 骨切り術(若年者、関節保存可能例) 人工股関節全置換術(THA: Total Hip Arthroplasty) 高齢者や重度の関節破壊例で有効。整形外科で最も成功した手術治療と言われる。 QOL改善が大いに期待される標準的治療 ■ 予後と生活指導 運動療法での筋力維持と関節保護が重要 正座・しゃがみ込み・激しい運動は回避 関節温存を目的とした早期発見・早期介入が重要 THA後は再脱臼・感染などに注意しながらリハビリと定期フォロー  

  • 鼠径部症候群

    鼠径部症候群(Groin Pain Syndrome / Groin Syndrome)の概要 ■ 定義 鼠径部症候群は、スポーツ選手(特にサッカーやラグビーなど)に多くみられる、慢性的な鼠径部痛を呈する疾患群の総称です。解剖学的に明確な障害部位が特定できない場合も多く、「スポーツヘルニア」「アスリートヘルニア」とも呼ばれることがあります。 ■ 原因 複合的な要因が関与します。主なものは以下の通り: 腹直筋腱・内転筋腱の付着部炎(enthesopathy) 恥骨結合の不安定性や炎症 骨盤内の筋膜性障害(薄筋・内転筋・腹直筋など) 股関節インピンジメント(FAI) 股関節唇損傷 スポーツヘルニア(鼠径管後壁の脆弱性) ■ 症状 鼠径部(内側太ももや下腹部)における運動時の疼痛 特にキック動作、方向転換、ダッシュ、腹筋運動などで悪化 安静時は無症状であることが多い 一部では反復する股関節前面の違和感も訴える ■ 診断 診断は主に**問診と身体所見、画像診断(除外診断を含む)**により行われます。 身体診察:内転筋抵抗テスト、腹筋抵抗テスト、片足立位・開排・閉脚運動での疼痛評価 画像検査: X線(恥骨結合や股関節変形評価) MRI(筋腱付着部炎、恥骨骨髄浮腫の有無 ■ 治療 基本は保存療法で、再発予防のためにも原因に応じたリハビリが重要です。 ● 保存療法(主流) 安静・運動制限 消炎鎮痛薬(NSAIDs) 物理療法(温熱、超音波) リハビリ(体幹・骨盤帯の安定性強化、柔軟性向上) テーピング・サポーターの使用 ■ 予後とスポーツ復帰 保存療法でも数週〜数ヶ月の加療で改善する例が多い 手術後も約8〜12週間でスポーツ復帰可能 再発防止にはコアマッスルの安定化トレーニングが重要 ■ スポーツ復帰のチェックポイント 完全な疼痛消失 腹筋・内転筋の筋力左右差解消 股関節の可動域が十分 ジャンプ・ダッシュ・方向転換時に痛みなし

  • 整形外科の股関節の病気・けが

    以下は、整形外科で扱う主な股関節疾患の一覧と簡単な説明です。臨床現場で頻度が高く、診断・治療の重要性が高い疾患を中心にまとめています。 🦴【整形外科の主な股関節疾患一覧】 疾患名 概要 変形性股関節症(OA) 加齢や先天性の形態異常(臼蓋形成不全など)により軟骨が摩耗し、疼痛・可動域制限をきたす。女性に多い。 股関節唇損傷 関節唇の断裂により疼痛やクリック音が出現。FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)との関連あり。 大腿骨頭壊死症 ステロイド使用やアルコール摂取が原因となり、骨頭の血流障害から壊死を起こす。進行するとOAに移行。 大腿骨近位部骨折(頸部・転子部) 高齢者の転倒で頻発。早期手術がADL・生命予後に直結する。 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 骨形態異常により運動時に股関節が衝突し、疼痛や可動域制限を生じる。若年〜中年に多い。 単純性股関節炎(滑膜炎) 小児に多く、一過性の股関節炎。ウイルス感染後に起こることが多く、保存的治療で軽快する。 ペルテス病(大腿骨頭骨端壊死症) 3〜10歳の男児に多く、成長期の大腿骨頭に血流障害が起こる。骨頭の扁平化を伴う。 大腿骨頭すべり症(SCFE) 思春期に多い。成長軟骨が弱く、骨頭が後下方にすべる。早期診断・固定が重要。 股関節唇嚢胞 関節唇損傷に伴って生じる嚢胞。神経や筋に圧迫症状を呈することも。 鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群) アスリートに多く、股関節周囲の筋腱・骨膜などの障害が原因。複数の原因が混在する。  

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