肩関節

  • 肩関節拘縮について

    肩関節拘縮(Frozen Shoulder / Adhesive Capsulitis) 概要 ■ 定義 肩関節拘縮とは、肩関節の関節包や靱帯が炎症や線維化によって硬化し、可動域が著しく制限される状態を指します。特に外転・外旋・屈曲の制限が目立ちます。 ■ 分類 原発性(特発性)拘縮  明らかな原因なく発症。40~60歳に好発。糖尿病や甲状腺疾患との関連が指摘されています。 続発性拘縮  外傷(骨折・脱臼)、術後(腱板修復術後など)、長期固定、疼痛性疾患(腱板断裂、石灰沈着性腱炎など)に続発。 ■ 症状 徐々に進行する肩の痛みと運動制限 夜間痛や安静時痛(初期に多い) 結髪・結帯・後方ポケット動作など日常動作の障害 ■ 病期 炎症期(Freezing phase):強い疼痛と可動域制限 拘縮期(Frozen phase):疼痛は軽減するが関節可動域の制限が顕著 回復期(Thawing phase):可動域の改善が進行(半年~1年以上かかることも) ■ 検査 X線:骨異常の除外 MRI:腱板断裂・滑液包炎・関節包肥厚などの評価 超音波:腱板の状態、滑液包、関節内液の評価 ■ 治療 ✅ 保存療法(第一選択) 内服(NSAIDs、アセトアミノフェンなど) 関節内注射(ステロイドやヒアルロン酸) リハビリテーション(関節可動域訓練、ストレッチ) ホットパックや超音波治療などの物理療法 ✅ 観血的治療(保存療法が無効な場合) 関節授動術(Manipulation under anesthesia) 関節鏡視下関節包解離術(Capsular release) ■ 予後 自然寛解もありうるが、早期の運動療法が予後改善の鍵 糖尿病合併例では長期化・再発傾向あり  

  • 肩関節周囲炎について

    **肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)**は、俗に「五十肩(ごじゅうかた)」とも呼ばれ、肩関節の痛みと可動域制限を主な症状とする疾患群です。以下に概要をまとめます。 ■ 概要 定義 肩関節周囲の軟部組織(腱、靭帯、関節包、滑液包など)に炎症や癒着が起こり、痛みと運動制限をきたす疾患。明らかな外傷や関節の構造的異常がない中年以降の方に多い。 ■ 原因・病態 明確な原因は不明(特発性)。 加齢に伴う腱板や関節包の変性が関与。 関節包の炎症 → 線維化 → 拘縮(関節の固まり)という経過をとる。 糖尿病や甲状腺疾患との関連もある。 ■ 症状 自発痛:特に夜間痛(寝返り時に強くなる)。 運動時痛:服の脱ぎ着、髪を結ぶ動作、背中に手を回すなどが困難。 可動域制限:外転・外旋・内旋の制限。 経過: 炎症期(数週間~数か月):強い痛み、特に夜間痛が主。 拘縮期(2〜6か月):痛みは軽減するが可動域制限が目立つ。 回復期(6か月~1年以上):徐々に可動域が回復。 ■ 診断 問診・理学所見:夜間痛と可動域制限の確認。 画像診断: X線:骨に異常なし。 MRI:腱板断裂との鑑別。関節包の肥厚や滑液包の炎症所見。 ■ 鑑別診断 腱板断裂 石灰沈着性腱炎 関節唇損傷(SLAP病変) 頸椎症による関連痛(神経根症) ■ 治療 保存療法(第一選択) 薬物療法:NSAIDs、湿布、夜間痛対策の鎮痛薬 注射:関節内ステロイド注射(炎症期に有効) 物理療法:温熱療法、超音波療法 リハビリ:ストレッチ、可動域訓練(拘縮期以降) 手術療法(まれ) 関節鏡下授動術(拘縮が強く、保存療法で改善しない場合) ■ 予後 多くは1~2年で自然軽快するが、リハビリを怠ると可動域制限が残ることもある。 再発は少ないが、反対側の肩にも起こることがある(約20~30%)。  

  • 整形外科の肩の病気・けが

    整形外科でよく扱う主な肩の疾患は以下のとおりです。各疾患には簡単な概要も添えています。 🔹 主な肩関節疾患一覧 疾患名 概要 肩関節周囲炎(五十肩) 肩関節の炎症により、痛みと可動域制限を伴う。加齢に伴うことが多く、自然治癒することもあるがリハビリが重要。 腱板断裂 棘上筋などの腱板が断裂し、挙上困難や夜間痛を伴う。加齢や外傷が原因。MRIで診断し、保存療法または手術適応となる。 石灰沈着性腱板炎 腱板に石灰が沈着して急性の炎症と激痛を生じる。自然吸収を待つ、注射、穿刺・吸引などが治療法。 反復性肩関節脱臼 若年者に多く、特にスポーツ外傷後に反復性となる。バンカート損傷やヒルサックス病変を伴う。関節鏡手術の適応も。 肩関節拘縮 手術や外傷後、長期固定などにより関節が硬くなり、可動域制限が生じる。リハビリでの可動域改善が目標。 肩鎖関節脱臼 肩への直接外傷(転倒など)で鎖骨が上方へずれる。重症度により保存療法または手術を選択。 上腕二頭筋長頭腱炎・断裂 肩前部の痛み。繰り返しの使用や腱板病変に合併。断裂により力こぶの変形(ポパイサイン)を呈することも。 変形性肩関節症 関節軟骨の摩耗により痛みと可動域制限。進行すれば人工肩関節置換術が適応されることも。 胸郭出口症候群 肩から手にかけてのしびれやだるさを訴える。神経や血管の圧迫による症状。運動療法中心の治療。  

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