スポーツ障害

腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)/ランナー膝

腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)/ランナー膝

走ると膝の外側が痛む ― 原因・治し方・練習再開の目安

腸脛靭帯炎とは

「走り始めてしばらくすると、膝の外側がジンジン痛くなる」「走行距離を伸ばしたら、膝の外側が痛くて途中で止まってしまう」「階段を下りるときに膝の外側が響く」― そんな経験はありませんか?その痛み、腸脛靭帯炎(ランナー膝)かもしれません。

腸脛靭帯炎は、太ももの外側を縦に走る「腸脛靭帯」という丈夫な線維の帯が、膝の外側の骨とこすれ合うことで痛みが出るスポーツ障害です。ランナーの膝の外側の痛みとしてはもっとも多く、マラソンや駅伝はもちろん、サッカー、バスケットボール、自転車競技などでもみられます。夏は練習量が増える時期でもあり、当院でも走る方からのご相談が多くなります。

ぶつけたりひねったりしたわけではないのに痛む「使いすぎ(オーバーユース)」による障害で、多くは手術をせずに、練習の調整とリハビリでよくなっていきます。ここでは腸脛靭帯炎について、患者さん向けにわかりやすくご説明します。

ランナー膝

こんな症状はありませんか?

  • 走り始めは平気だが、一定の距離・時間を過ぎると膝の外側が痛くなる
  • 下り坂やゆっくりしたペースのジョギングで、かえって痛みが強くなる
  • 階段を下りるときに膝の外側がズキッと響く
  • 膝の外側の出っ張った骨(大腿骨外側上顆)を押すと痛い
  • 膝を軽く曲げ伸ばしすると、外側で引っかかる・擦れるような感じがある
  • 休むと痛みは治まるが、練習を再開するとまた同じところが痛む
「膝の“お皿”ではなく“外側”が、走っている途中から痛む」というのが腸脛靭帯炎の代表的なサインです。 我慢して走り続けると治りにくくなりますので、早めにご相談ください。

腸脛靭帯とは?

太ももの外側を支える丈夫な「帯」です

腸脛靭帯は、骨盤の外側(腸骨)から太ももの外側を縦に下り、膝の下(脛骨の外側)に付着する、長くて丈夫な線維の帯です。お尻の筋肉(大殿筋・大腿筋膜張筋)とつながっていて、立っているときや片脚で着地したときに、骨盤と膝が横方向にぐらつかないよう安定させる役割をしています。

膝を曲げ伸ばしすると、腸脛靭帯は膝の外側にある骨の出っ張り(大腿骨外側上顆)の上を前後に動きます。走る動作でこれが何千回、何万回と繰り返されると、靭帯と骨の間にある組織がこすれて炎症を起こし、痛みが生じます。これが腸脛靭帯炎(腸脛靭帯症候群、いわゆるランナー膝)です。

膝が約30度曲がったあたりで靭帯と骨がもっとも近づくため、着地して膝が軽く曲がる瞬間に痛みが出やすいのが特徴です。下り坂やゆっくりしたペースの走行で痛みが強くなるのは、この角度で過ごす時間が長くなるためと考えられています。

腸脛靭帯炎の原因

  • 急な練習量・強度の増加 ― 走行距離やスピード練習を一気に増やしたとき
  • 下り坂・かたい路面・同じ方向のトラック走 ― 膝の外側への負担が偏る
  • お尻の筋力不足(中殿筋など) ― 着地で骨盤が横に落ち、膝が内側に入って靭帯が引っ張られる
  • 股関節まわり・太ももの外側の硬さ ― 大腿筋膜張筋や大殿筋の柔軟性低下
  • 脚のアライメント ― O脚傾向、扁平足、脚長差など
  • すり減った靴・合わない靴 ― 靴底の外側だけが極端に減っている場合は要注意
「走り方が悪いから」と自分を責める必要はありません。多くは練習量と体の準備のバランスが崩れたことが引き金です。 原因を整理すれば、対策は立てられます。

腸脛靭帯炎の症状

もっとも特徴的なのは、膝の外側、関節の少し上あたりの痛みです。進行すると次のような経過をたどります。

段階症状のめやす
軽度運動のあとにだけ膝の外側が痛む。翌日には治まる
中等度走行中の一定の距離から痛みが出る。休むと軽くなるが、走ると再発する
重度走り始めからすぐ痛む。階段の上り下りや歩行など、日常生活でも痛む

痛む場所は、膝の外側の出っ張った骨のあたりに指1〜2本分の狭い範囲で限られることが多く、押すとはっきり痛みます。腫れや熱っぽさをともなうこともあります。

膝の外側の痛みには、半月板の損傷や関節の中の問題など別の原因が隠れていることもあります。 膝が腫れる・引っかかる・力が抜けるといった症状がある場合は、自己判断せず一度診察をお受けください。

検査・診断

問診と診察でおおよその見当がつきますが、当院では以下の検査を組み合わせて、他の病気との区別も含めて正確に診断します。

検査わかること
問診・触診痛む場所、走行距離と痛みの関係、練習内容の変化を確認。大腿骨外側上顆の圧痛や、膝の曲げ伸ばしでの誘発テストを行います
動作・アライメントの評価片脚立ちやスクワットで骨盤の安定性、膝が内側に入る動きなどを確認。お尻の筋力や股関節の柔らかさも評価します
X線(レントゲン)骨に異常がないか、脚の並び(O脚など)を確認。疲労骨折や関節の変形との区別に役立ちます
超音波検査(エコー)腸脛靭帯の厚みや、靭帯の下の組織のむくみ・炎症をリアルタイムで観察。痛みの原因を「見える化」でき、注射の位置決めにも役立ちます
MRI検査靭帯や周囲の組織、半月板・関節内の状態を詳しく評価。症状が長引く場合や他の疾患を除外したい場合に有用です。当院は横になって受けられるオープンMRIを備えています

当院での治療

腸脛靭帯炎の治療は、手術をしない保存療法が基本です。ほとんどの方が保存療法で競技に復帰できます。当院では、患者さん一人ひとりの状態と競技の予定に合わせて、以下を組み合わせて行います。

① 練習量の調整とアイシング

まず行うのは、痛みの出る動作を減らすことです。完全に運動をやめる必要は必ずしもなく、走行距離を減らす、下り坂やスピード練習を避ける、水泳や自転車など痛みの出ない運動に一時的に切り替えるなど、「痛みが出ない範囲」を医師・理学療法士と一緒に決めていきます。運動後に膝の外側が熱をもつときは、アイシングが有効です。

② リハビリテーション(運動療法)― 治療の柱

再発を防ぐうえでもっとも大切なのがリハビリです。理学療法士が一人ひとりの体の使い方を評価したうえで、次のような内容を個別に指導します。

  • お尻の筋肉(中殿筋・大殿筋)の強化 ― 着地の安定性を高め、膝が内側に入るのを防ぐ
  • 大腿筋膜張筋・太もも外側・股関節まわりのストレッチ
  • 体幹の安定性トレーニング
  • ランニングフォームや着地の指導
③ 薬物療法・ハイドロリリース

痛みが強い時期には、消炎鎮痛薬の内服や外用薬(湿布・塗り薬)で痛みをやわらげます。痛みが強くリハビリを進めにくい場合には、超音波ガイド下のハイドロリリースで、靭帯と周囲の組織の間に生理食塩水などを注入し、癒着や硬さをやわらげて痛みの軽減をはかることがあります。

④ 体外衝撃波治療(ESWT)

数か月以上つづく慢性の痛みに対しては、体の外から衝撃波を患部に当て、血流を改善して組織の回復を促す体外衝撃波治療(ESWT)を選択肢としてご提案することがあります。

⑤ インソール・靴の見直し

足のアーチや脚の並びに応じて、中敷き(インソール)の活用やシューズ選びをご提案します。靴底のすり減りは、負担の偏りを教えてくれるサインです。

腸脛靭帯炎で手術が行われることはまれです。多くの方は、練習量の調整とリハビリを地道に続けることで数週間〜数か月かけて改善していきます。「痛みが消えた=治った」ではなく、原因となった筋力や柔軟性の課題が改善して初めて再発を防げます。 あせらず取り組みましょう。

日常生活・練習で気をつけること/予防

  • 練習量は急に増やさない ― 走行距離や強度は少しずつ上げるのが基本です
  • 下り坂・かたい路面を避ける ― 痛みが出やすい時期はコースを見直しましょう
  • 同じ方向ばかり走らない ― トラックや傾いた路肩では、走る向きを時々変える
  • お尻の筋トレを習慣に ― 中殿筋のトレーニングは予防にもっとも役立ちます
  • 運動前後のストレッチ ― 股関節まわり、太ももの外側と後ろ側をゆっくり伸ばす
  • シューズを定期的に交換する ― 走行距離の目安で早めに履き替え、すり減った靴は使わない
  • 夏場は暑さ対策も ― 疲労がたまるとフォームが崩れ、障害につながりやすくなります。水分補給と休養日を確保しましょう

よくある質問

どのくらいで走れるようになりますか?
個人差がありますが、軽症であれば数週間、慢性化した場合は数か月かかることもあります。大切なのは「痛みが引いたらすぐ元の練習量に戻す」のではなく、段階的に距離と強度を戻していくことです。復帰の進め方は診察のうえで一緒に計画を立てます。
痛くても走り続けて大丈夫でしょうか?
痛みを我慢して走り続けると炎症が強まり、かえって治るまでの期間が長くなります。走り始めから痛む、日常生活でも痛むという状態であれば、いったん走るのを中止して受診をおすすめします。軽症のうちなら量を減らしながら続けられる場合もありますので、ご相談ください。
マッサージやフォームローラーで太ももの外側をほぐすのは有効ですか?
股関節まわりや太ももの筋肉の柔軟性を高めることは有用です。ただし、痛みの強い膝の外側そのものを強く押しつぶすと、かえって刺激になることがあります。痛む部位を直接強くほぐすのは避け、無理のない範囲で行ってください。方法はリハビリでお伝えします。
膝の外側が痛ければ、すべて腸脛靭帯炎ですか?
いいえ。外側半月板の損傷、膝関節の中の問題、腓骨頭まわりの痛みなど、別の原因のこともあります。膝が腫れる、引っかかる、力が抜ける、ひねったきっかけがある、といった場合は特に鑑別が必要です。当院では超音波検査やオープンMRIで確認できます。
サポーターは使ったほうがいいですか?
一時的に痛みが軽くなる方はいますが、サポーターだけで治るものではありません。あくまで補助と考え、筋力・柔軟性の改善と練習量の調整を並行して行うことが大切です。
ランニング以外のスポーツでもなりますか?
なります。自転車競技、サッカー、バスケットボール、登山、長距離の歩行など、膝の曲げ伸ばしを繰り返す活動で起こりえます。急に登山や長距離歩行をした後に発症する方もいらっしゃいます。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療を行うものではありません。症状がある場合は医師の診察を受けてください。
最終更新日:2026年7月






ブログをご覧いただいたみなさまへ

記事が参考になりましたら、Googleの評価もお願いできると励みになります。
良い点も改善点も、率直なご意見をお待ちしています。


Googleで口コミを書く →

岸谷整形外科クリニック

お気軽に
お問い合わせください

fixed reservefixed reserve