整形外科のおもな病気 各論

痛風

以下は**痛風(Gout)**についての概要です。


🔷 痛風とは?

痛風は、血液中の尿酸値が高くなる(高尿酸血症)ことで、関節内に尿酸結晶が沈着し、激しい関節炎(主に足の親指)を引き起こす病気です。


🔶 原因

  • 尿酸の産生増加(例:プリン体の多い食事、アルコール、多血症など)

  • 尿酸の排泄低下(例:腎機能低下、薬剤[利尿薬など])

  • 遺伝的要因


🔶 症状

急性痛風発作(代表的初発症状)

  • 突然の関節の激痛・腫れ・発赤

  • 特に足の親指の付け根(第1中足趾関節)

  • 夜間〜早朝に多い

  • 発熱や全身倦怠感を伴うことも

慢性痛風

  • 繰り返す発作

  • 痛風結節(耳介・肘・アキレス腱などに尿酸結晶のかたまりができる)

  • 関節の変形や機能障害


🔶 検査

  • 血液検査(尿酸値、CRP、白血球数など)

  • 関節液検査(尿酸結晶の確認)

  • X線(慢性期には骨びらん)

  • 超音波やMRIでの関節病変の評価


🔶 治療

① 急性発作時の治療

  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) 当院では主にこちらを処方しています

  • コルヒチン(発作初期に有効)

  • 副腎皮質ステロイド(内服または関節内注射)

※ 尿酸値を急に下げる薬は発作時には使用しない(症状を悪化させるため)

② 発作予防・長期管理

  • 尿酸降下薬の使用(発作が落ち着いてから)

    • アロプリノール(尿酸生成抑制)

    • フェブキソスタット

    • ベンズブロマロン(尿酸排泄促進)


🔶 生活指導(予防のカギ)

  • プリン体を多く含む食品の制限(内臓、干物、ビールなど)

  • アルコール制限

  • 水分摂取の増加

  • 肥満・メタボの是正

  • 適度な運動

  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理


 

お薬について

「フェブリク(Feburic)」は、痛風や高尿酸血症の治療薬として用いられる尿酸降下薬のひとつです。以下に詳細をまとめます。


🔷 フェブリクとは?

  • 一般名:フェブキソスタット(Febuxostat)

  • 商品名:フェブリク錠(10mg、20mg、40mg、60mg)

  • 分類:選択的キサンチンオキシダーゼ(XO)阻害薬


🔶 効果・作用機序

フェブリクは、尿酸の産生に関与するキサンチンオキシダーゼ(XO)という酵素を選択的に阻害することで、尿酸の生成を抑え、血中尿酸値を低下させます。


🔶 適応症

  • 痛風(急性発作の予防)

  • 高尿酸血症(関節障害や腎障害などの合併症を伴う場合)

急性痛風発作中の開始は避ける(発作悪化の可能性あり)


🔶 用法・用量(例)

  • 通常、10~40mgから開始し、効果を見ながら漸増

  • 最大60mg/日まで使用可能(腎機能や尿酸値に応じて調整)


🔶 副作用

  • 初期:痛風発作の誘発(導入初期)

  • 肝機能異常(AST・ALT上昇)

  • 発疹、胃腸症状(腹痛、下痢など)

  • 稀に心血管イベントのリスク増加報告あり

    • ※心疾患既往のある患者には慎重投与


🔶 注意点

  • 投与開始直後はコルヒチンやNSAIDsで発作予防を行うことが推奨される

  • 腎機能に応じて用量調整がしやすい薬剤(腎排泄が少ないため)

  • 血中尿酸値が6.0mg/dL未満を目標に治療


🔶 他の尿酸降下薬との違い

薬剤名作用機序特徴
アロプリノール非選択的XO阻害薬古くから使われる。副作用注意。
フェブリク選択的XO阻害薬肝代謝。腎障害患者にも使いやすい。
ベンズブロマロン尿酸排泄促進薬尿酸排泄型。尿路結石リスクに注意。

 

「ユリス®(Yuris)」は、**一般名:ドチヌラド(Dotinurad)という、有効性と安全性に優れた選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)**で、2020年5月に日本国内で発売された比較的新しい高尿酸血症・痛風治療薬です (med.mochida.co.jp)。


🔷 ユリスの特徴

① URAT1選択的阻害

腎臓の近位尿細管にある「URAT1トランスポーター」を選択的にブロックし、尿酸の再吸収を防ぐことで尿中排泄を促進し、血中尿酸値を効果的に低下させます (ehealthclinic.jp)。

② 他トランスポーターへの影響が少ない

ABCG2やOAT1/OAT3といった他の排泄経路には影響しにくく、腎臓への負担が少ないことが特徴です (medi-career.jp)。


📊 臨床成績と有効性

  • 第III相試験では、24週後に **尿酸6.0mg/dL以下を達成した割合はドチヌラド群で84.8%**に対し、フェブキソスタット群で88.0% (med.mochida.co.jp)。

  • Chinaでの比較試験でも、ドチヌラド4mgはフェブキソスタット40mgを統計学的に上回る優越性を示しました (eisai.co.jp)。


💊 用法・用量

  • 開始量:0.5mg/日(1日1回)

  • 漸増プロトコール:2週間後に1mgへ、6週間後に2mgへと段階的に増量し、最大4mgまで(腎機能・尿酸値に応じて調整) (kegg.jp)。


⚠️ 注意事項・副作用

  • 急激な尿酸低下により、初期に痛風発作を誘発するおそれがあるため、NSAIDsやコルヒチン併用が推奨されます (kegg.jp)。

  • 尿量増加と尿のアルカリ化が重要です(尿路結石リスク回避) (kegg.jp)。

  • 肝機能障害や腎機能障害患者では慎重投与が必要。eGFR < 30では使用非推奨 (carenet.com)。

  • 過敏症の既往がある場合は禁忌です (kegg.jp)。


🆚 他の尿酸降下薬との比較

薬剤名作用機序特徴・使い分け
フェブリク(フェブキソスタット)XOR阻害(尿酸生成抑制)腎障害OK・心血管リスク注意
アロプリノールXOR阻害(非選択的)腎機能低下症例に用量調整が必要
ユリノーム(ベンズブロマロン)尿酸排泄促進(URAT1他含む)肝障害リスク・尿路結石注意
ユリス(ドチヌラド)URAT1選択的再吸収阻害(排泄促進)腎・肝負担軽減、使いやすい

✅ 適応・選択のポイント

  • 尿酸排泄低下型の高尿酸血症に最適。

  • フェブリクで十分効果が得られない場合の代替としても有効。

  • 腎機能低下患者や肝障害懸念がある場合にも使いやすい

  • 尿路結石既往や重度腎機能障害のある患者は注意が必要です。


📌 まとめ

ユリス(ドチヌラド)は、

  • 選択的URAT1阻害による排泄促進型

  • 漸増プロトコールで発作リスク軽減

  • 腎・肝への負担が少ない比較的安全な薬
    として、フェブリクとは異なるメカニズムを活かし、臨床での選択肢を広げる治療薬です。


 

岸谷整形外科クリニック

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