突き指について
突き指について
「単なる突き指」と思わないで ― 骨折や靭帯損傷の可能性
突き指とは
スポーツ中にボールが当たった、転んで指をついた、ドアに指を挟んだ ― こうした「突き指」の経験は誰もが持っているかもしれません。
しかし「たかが突き指」と軽く考えるのは危険です。見た目には分からない骨折や靭帯損傷、腱の断裂が隠れていることが多いのです。放置すると指が曲がったまま伸びなくなったり、握力が低下したりと、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

こんな症状がある場合は要注意
- 指の関節に強い痛みと腫れがある
- 数日たっても痛みや腫れが引かない
- 指が伸ばしにくい、または曲げにくい
- 指先がいつもと違う角度に曲がっているように見える
- 指の手のひら側を押すと痛い
- 指を横から押すとぐらぐらする
突き指に含まれる主な損傷
「突き指」と一言で言っても、実際には複数の異なる損傷が含まれます。それぞれ治療法が異なるため、正確な診断が不可欠です。
| 病態 | 特徴 |
|---|---|
| 中節骨基部掌側剥離骨折 | 最も頻度が高い骨損傷。PIP関節の過伸展で掌側板が骨片を剥がす。掌側に圧痛 |
| マレットフィンガー(槌指) | DIP関節(指先の関節)が自力で伸ばせない。末節骨の背側剥離骨折 |
| 中央索損傷 | PIP関節が自力で伸ばせない。放置するとボタン穴変形に |
| 側副靱帯損傷 | 指を横から押すと不安定。側方ストレスで痛み |
| ジャージーフィンガー | DIP関節が自力で曲げられない。深指屈筋腱の断裂 |
突き指の原因
- バスケットボール、バレーボール、野球などの球技でボールが指に当たる
- 転んで手をついた際に指に力が集中した場合
- ドアに指を挟んだ
- 格闘技やラグビーなどのコンタクトスポーツ
- 好発年齢は10〜30歳代、男性に多い
当院での検査
「たかが突き指」と思わず、必ず専門医の診察を受けることをおすすめします。
| 検査方法 | 目的 |
|---|---|
| 視診・触診 | 腫れ、内出血、変形の有無を確認。圧痛の位置(掌側か背側か側方か)を特定します |
| X線検査 | 正面・真横(true lateral)・斜位の3方向で撮影。損傷した指のみを単独で撮影し、小さな骨片を見逃さないようにします |
| 超音波検査(エコー) | 腱の断裂、靭帯・掌側板の損傷の程度をリアルタイムで評価できます |
| MRI・CT | 複雑な損傷が疑われる場合、関節面の骨折範囲を正確に把握する際に追加します |
当院での治療
突き指の治療は、損傷の種類と程度によって異なります。
軽度の靭帯損傷(捻挫)
- RICE処置:安静(Rest)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)で痛みと腫れを軽減
- テーピング・固定:buddy taping(隣の指と一緒にテーピング)で靭帯の治癒を促進(1〜2週間が目安)
- 早期からの運動療法:完全に動かさないのではなく、医師の指導のもと適切な範囲で動かし、関節の硬さを防ぎます
マレットフィンガー(槌指)
指の先端の関節(DIP関節)を伸ばす腱が切れ、指先が曲がったままになる状態です。6〜8週間、指の先端を伸ばした位置で固定することが大切です。放置すると伸ばせなくなったまま固くなってしまいます。
最も多い骨損傷 ― 中節骨基部掌側剥離骨折
突き指のなかで最も頻度が高い骨損傷が「中節骨基部掌側剥離骨折」です。軽視されやすい損傷ですが、初期対応の質でその後の経過が大きく変わります。

過伸展により掌側板が骨片を引き剥がします
なぜ起こるのか
PIP関節(指の第2関節)には「掌側板(しょうそくばん)」という硬い板状の組織が手のひら側に付いて関節を安定させています。掌側板は特に中節骨の根元側(基部)に強固に付着しています。
ボールが指先に当たるなどして指が過伸展(反り返る方向)されると、掌側板が中節骨基部を強く引っ張り、骨の表面ごと引き剥がします。これが中節骨基部掌側剥離骨折です。
損傷の程度 ― Eaton分類
掌側板損傷は程度によって3つの型に分けられ、型によって治療方針が異なります。
| 分類 | 病態 | 治療方針 |
|---|---|---|
| Type I | 掌側板の部分損傷(軟部組織のみ)。関節は安定 | 保存療法 |
| Type II | 掌側板の完全断裂。背側脱臼を伴う | 整復後、安定していれば保存療法 |
| Type III-a | 骨折を伴う脱臼。関節面の損傷が30〜40%未満 | 保存療法(バディテーピング) |
| Type III-b | 骨折を伴う脱臼。関節面の損傷が30〜40%以上 | 手術療法 |
Type I と Type III-a が最も多く、いずれも保存療法で改善が期待できます。Type III-bでは手術が必要となるため、正確な画像評価が欠かせません。
治療の基本原則 ―「過伸展だけ止めて、屈曲は動かす」
かつては指全体をギプスで長期間固定する治療が行われていましたが、これではPIP関節の屈曲拘縮(曲がったまま伸びなくなる)の原因となっていました。
現在は「過伸展だけ止めて、屈曲は積極的に動かす」が基本原則です。当院ではバディテーピング(隣の指と一緒にテーピング)による固定を行い、過伸展を制限しつつ屈曲運動は自由に行えるようにしています。
当院での固定方法 ― バディテーピング
- 隣の指と一緒にテーピングし、過伸展を制限しつつ屈曲運動は自由に行えるようにします
- 固定期間中も能動的な屈曲運動を毎日行い、拘縮を予防します
- 2〜4週間の装着が目安です
- 症状が重い場合は、当院の理学療法士によるテーピング指導や機能訓練も行っています
リハビリテーション
固定とリハビリは同時並行で進めます。固定中から能動的な屈曲運動を行うことが、拘縮予防のカギです。症状が重い場合は理学療法士が個別にテーピング方法の指導や機能訓練を行います。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 急性期(0〜2週) | 浮腫管理(挙上・圧迫)、バディテーピング内での能動屈曲運動 |
| 回復期(2〜4週) | テーピングを継続しつつ可動域の拡大 |
| 強化期(4〜6週) | 全可動域訓練、軽負荷の握力訓練 |
| 復帰期(6週〜) | スポーツ・仕事への復帰、テーピング併用で再受傷予防 |
治療経過と予後
- 骨癒合:4〜6週で得られます
- 腫れ(fusiform swelling):3〜12ヶ月持続することがあります。これは異常ではなく経過として一般的です
- 軽度の伸展制限:5〜10°程度残ることがあります
- スポーツ復帰:4〜8週程度、テーピング併用で復帰
手術が必要な場合
関節面の損傷が30〜40%以上(Eaton Type III-b)、整復ができない場合、明らかな関節の不安定性がある場合には手術が必要です。手術が必要な場合は、適切な専門医療機関をご紹介いたします。
放置するとどうなるか
「ただの突き指」と放置したり、不適切な固定を続けたりすると、以下のような後遺症が残る可能性があります。
- PIP関節の屈曲拘縮:最も多い後遺症。長期間の完全固定や能動屈曲の不足が原因。指が曲がったまま伸びにくくなります
- 慢性的な腫脹・疼痛:適切なリハビリが行われなかった場合に長引くことがあります
- スワンネック変形:掌側板の機能不全によりPIP関節が過伸展+DIP関節が屈曲する変形
- 外傷性関節症:関節面の骨折が適切に整復されなかった場合に進行する可能性
回復を早めるための日常生活の工夫
- 最初の48時間は冷やす:腫れを抑えるため、氷を使った冷却を続けます
- 患部を高く上げる:腕を上げることで、むくみを減らせます
- 固定中も指を動かす:テーピング中でも能動的な屈曲運動が拘縮予防に不可欠です
- 医師の指示のもとでリハビリを開始:固定が取れた後は、段階的に動きを取り戻すことが大切です
- スポーツへの復帰は医師の許可を待つ:腫れや痛みが改善し、握力が戻ってから。テーピング併用で再受傷を予防
よくあるご質問
- 突き指をしたら、まず何をすればいいですか?
- 患部を冷やし、できるだけ動かさないことが大切です。テーピングで隣の指と固定し、できるだけ早く医師の診察を受けてください。マッサージや温めることは、腫れを悪化させるため避けてください。特に指を伸ばせない、横にぐらぐらする、変形しているなどの場合は早めの受診が重要です。
- レントゲンを撮る必要はありますか?
- はい。見た目だけでは掌側板の剥離骨折や関節のずれは判断できません。当院では正面・真横・斜位の3方向でレントゲンを撮影し、特に真横からの撮影で小さな骨片やV-sign(亜脱臼のサイン)を見逃さないようにしています。
- 突き指がなかなか治りません。どのくらいで治りますか?
- 損傷の程度によって大きく異なります。軽い捻挫なら1〜2週間で痛みが減りますが、掌側板の剥離骨折では骨癒合に4〜6週かかります。また、PIP関節の紡錘状の腫れは治療が順調でも3〜12ヶ月続くことがあります。これは異常ではなく一般的な経過です。
- 仕事やスポーツはいつ頃できますか?
- デスクワークなど軽い作業は固定をしながら早い段階から可能です。スポーツ復帰は4〜8週が目安ですが、テーピングの併用を推奨しています。復帰時期は損傷の程度や競技内容により個別に判断します。
- 突き指でも手術が必要な場合があるのですか?
- はい。関節面の骨折が30〜40%以上(Eaton分類 Type III-b)、靭帯の完全断裂、腱の断裂など、保存治療では治らない場合は手術が必要になることがあります。当院で詳しい診断を行い、必要に応じて専門の施設をご紹介します。
- 以前突き指をして放置しました。今からでも治療できますか?
- 時間が経っていても、関節の拘縮や痛みに対してリハビリや治療が可能です。気になる症状がある場合は受診をおすすめします。





